11月17日付 想像以上に深刻な「米国内の分断」160年前の「南北戦争」につながる大統領選に匹敵

ジョー・バイデン前米副大統領が勝利宣言を行った直後の11月7日夜(日本時間)、杉山晋輔駐米大使と一時間ほど電話で話す機会を得た。 もちろん、オフレコなので同大使の発言を引用することはできない。 だが、今回の米大統領選の捉え方について重要な指摘をされたので、その一点だけ紹介する。 
2017年1月にドナルド・トランプ大統領が誕生、その後のトランプ氏の「アメリカ・ファースト」によって米国は国際社会から孤立し、国内の分断が加速したと指摘されてきた。 しかし、「米国の分断」と簡単に表現するのが憚れるほど、その実態は想像以上に深刻であると杉山大使は言う。 同氏の指摘を筆者なりに咀嚼すると、以下のようになる。 
米国分断の象徴とされるのが南北戦争(1861~65年)である。その前年11月に第19回米大統領選が実施された。 
エイブラハム・リンカーン(共和党)が一般投票で過半数に達しなかったが、選挙人投票で過半数を獲得・勝利して第16代大統領に就任した。▶︎

▶︎その後、南部サウスカロライナ州が米合衆国を脱退、南部諸州が追随して南北戦争の道を突き進んだのである。 
今大統領選は、米国分断のトリガー(引き金)となった160年前の大統領選に匹敵する、米憲政史に残るターニングポイントであった。 「敗北」を認めないトランプ大統領は、12月14日の選挙人投票日の6日前までに集計から訴訟など問題点を解決する目的の期間(「safe harbor期限」)の同8日まで“撤退”することはない。 
いずれにしても、来年1月21日にバイデン大統領が誕生する。 
菅義偉首相がバイデン氏と初めて電話会談した12日午前、バイデン政権の大統領首席補佐官(日本の官房長官)にロン・クレイン元副大統領首席補佐官の起用が決まった。 クレイン氏は、クリントン政権のアル・ゴア、オバマ政権のバイデン両副大統領の首席補佐官を務めた。 
バイデン政権の主要閣僚とホワイトハウス幹部人事は26日の感謝祭頃までに出揃うはずだ。 
菅政権が注目するのは国務長官、財務長官、そして大統領補佐官(国家安全保障担当)である。親中派のスーザン・ライス元大統領補佐官の国務長官だけは勘弁して欲しいが外務省の“本音”のようだ。杉山大使がアクセスを持つトニー・ブリンケン元国務副長官は大統領補佐官当確である。