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「金正雲極秘訪中」の朝日報道はスクープだった

 6月29日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT紙アジア版)は一面トップで、北朝鮮の金正日労働党総書記(国防委員会委員長)の三男で、後継指名されたと伝えられている金正雲が6月10日から17日まで中国を極秘裏に訪問したのは事実である報じた。
 これに先立ち、『朝日新聞』(同16日付朝刊)はやはり一面トップで峯村健司北京特派員のスクープ記事「『後継』正雲氏が訪中―金総書記の名代、胡錦濤主席らと会談」とスクープ、さらに同紙は18日付朝刊で「正雲氏訪中に正男氏も同席―胡主席に後継強調か」の続報を掲載した。ところが、中国外務省の秦剛報道官が18日の定例会見で朝日新聞の一連の報道について、「報道された事実は存在しない」と否定した上で、「まるで『007』を読んでいるようだ」と述べたことから、日本各紙(誌)はここぞとばかり『朝日』の"誤報道"の批判キャンペーンを展開、「金正雲極秘訪中」情報はガセネタだったという見方が関係者の間で定着した。さらに中国側からの追い討ちは続き、25日には、武大偉外務次官が訪中した自民党の加藤紘一元幹事長に対し「金正雲氏は一回も中国に来たことがない」と述べ、改めて全面否定したのだ。これで抜かれたはずの各紙は溜飲を下げたのだった。
 そこへFT紙の報道である。同紙は現在、世界に数多ある新聞の中で最もクレディビリティのある高級紙という評価を得ており、そのFT紙が『朝日』報道の内容とは若干異なるものの、金正雲の極秘訪中を確認したことで、勝負は付いたと言えよう。
 『朝日』のスクープ記事では、@金正雲は6月10日前後に空路で北京入りし、胡錦濤国家主席のほか、王家瑞共産党対外連絡部長ら幹部と相次いで会談、17日までに帰国したA中国側は、同席した側近から金正雲が既に朝鮮労働党組織部長に就任していると説明されたB金正雲は中国滞在中、北京以外にも上海、広東省、遼寧省大連の経済開発区などを視察したC金正雲の胡錦濤との会談には胡と面識のある長男の金正男が同席した――など特大級の情報があった。
 がしかし、FT紙によれば、金正雲訪中には、金正日の義弟で、後継問題で大きな発言力があるとされる張成沢労働党行政部長(国防委員会委員)と、軍部長老の実力者である趙明録国防委員会第一副委員長が同行したという。そして会談した中国側のトップは、胡錦濤ではなく習近平副主席だったというのだ。
 いずれにしても、中国側はそう遠くない時期に金正雲訪中を公式に認めることになるはずだが、もしそうなれば『朝日』の峯村=北京電は、新聞協会賞はもとより世界的なスクープということになる。そして同特派員のネタ元が気になるところだ。       (6月29日記)