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民主党の「外交・安保」は現実路線なのか?

 「鳩山政権」誕生が確定的となり、関係者の間で9月中旬以降の政治・外交日程が取り沙汰される中で、民主党の外交・安保政策に対する関心が高まっている。8月30日の総選挙で、民主党が単独過半数(241議席)を制するのはほぼ間違いない。鳩山由紀夫代表は7月31日午後に党本部で行われた記者会見で、政権を獲った場合、9月の国連総会とG20(金融サミット)に出席するのかという質問に対し「当然のことながらG20、そして国連総会は重視すべきだ。民主党はこれまでにも、特に国連を重視する考え方を表明してきており、民主党が政権を獲った暁には、でき得ればそのような外交日程をこなせるように努力したい」と答えた。
 国連総会は同月15日からニューヨークの国連本部で開かれる。また、同25〜28日までピッツバーグでG20会合が予定されている。鳩山氏は特別国会で内閣総理大臣に選出され、内閣を立ち上げた後、米国を訪れ22日か23日のいずれかに国連総会で一般演説を行い、その直後の金融サミットにも出席する意向を示したのだ。
 そしてニューヨーク滞在中に、やはり国連総会に出席するオバマ米大統領との日米首脳会談を行う腹積もりであろう。こうした外交日程から逆算すると、国会での首班指名選挙は9月7日の週の半ばまでに実施され、選出される鳩山氏は直ちに組閣、官邸スタッフ人事と政権党・民主党の新執行部人事に着手するはずだ。翌週には臨時国会を召集し、所信表明演説を行い、各党からの代表質問を受ける。その週末に米国に向け発つといった政治・外交日程になるだろう。  
 いま新聞各紙は連日、民主党の外交・安保政策に関する特集記事で賑わっている。同党がマニフェスト(政権公約)を発表した7月27日の『読売新聞』(朝刊)には「民主"現実外交"―対米重視へ急転換」とある。翌日の各紙(28日付朝刊)を読んでも、『朝日新聞』が「米国配慮の姿勢強める」、『読売新聞』は「基軸は日米同盟―地位協定は"改定提起"」、『毎日新聞』も「外交安保―薄まる"対等な日米"」など、一応にこれまでの「対米依存路線からの転換」を軌道修正したと報じている。さらに社説でも「現実路縁がまだ不十分だ」(『読売』)、「"歴史的転換"に説得力を」(『朝日』)など民主党の外交・安保政策の「ぶれ」を指摘している。  
 具体的に言えば、@インド洋における海上自衛隊による給油活動の継続問題、A「おもいやり予算」など在日米軍駐留経費負担の見直し問題、B日米地位協定の改定問題、C在日米軍再編の中核である沖縄・普天間飛行場の移設見直し問題――の4点が当面の民主党が直面する問題点だ。
 @について鳩山氏は7月29日、来年1月15日に期限が切れる新テロ特別措置法を更新しない、つまり給油活動を停止すると言明した。一方、Bについてはマニフェストで従来の主張「改定に着手する」を「改定を提起する」にトーンダウンさせた。筆者の情報源である米国防総省(ペンタゴン)関係者は、鳩山政権が、今年3月から9月までアフガニスタンの警察官約8万人の給与の半分を日本が支援したような何か代替案を示せば、オバマ政権も給油活動中止を許容できると述べている。
 が、一番の難題はCの「普天間県外移設」要求である。客観的に見ても、米海兵隊の同飛行場の返還は、1996年の日米合意以降最も実現に近づいており、現在は熟した「果実」を収穫する段階である。普天間移設は在沖縄海兵隊約8000人のグァムへの移転と嘉手納以南の米軍施設・区域の大規模返還(嘉手納以南を含む同県中南部に人口の80%が集中)がパッケージになっている。民主党の主張する県外移設の具体的な候補地がない限り、その見直しは@、Aについても白紙に戻るリスクがある。仲井眞弘多知事も、来年11月の知事選挙前の9月までに普天間飛行場の辺野古(キャンプ・シュワブ)への移設決定に署名したいとの意向を明らかにしている。同時に、同県の経済界も特需狙いでキャンプ・シュワブへの移設に賛成している。飽くまでも同党が県外移設に拘れば、そこにリアリティがないだけに、これまで14年間に及よんだ日米交渉はすべてパーになる。即ち、グァム移転が決まった8000人の海兵隊員は引き続き普天間に残ることになるのだ。  
 筆者はもちろん、『琉球新報』と『沖縄タイムズ』の両地元紙の世論調査で沖縄県民の7割以上が「県外移設」に賛成であることを承知している。一方で、仲井眞知事の「基地政策」についても6割近い賛成があることも知っている。要は、東アジアに軍事的空白を作らずにハワイとグァムを拠点とする米軍の「緊急派遣軍」構想を推進させることが、北朝鮮の「核とミサイル」の現実的脅威に晒されている日本の安全保障にとって理に適っているという認識を持てるかどうかである。そして、鳩山氏が信を置く寺島実郎日本総合研究所会長が言う「米軍基地を段階的に縮小させる」のは当然のことだ。民主党が本当に「米国配慮の姿勢を強めた」かどうかは、「鳩山首相」の9月下旬訪米で判明する。  (8月4日記)