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寺島実郎氏の訪米目的

 寺島実郎――。長きに渡って商社マンでありながら、外交・安全政策から経済金融政策、果ては環境問題にまで言論・執筆活動の領域を拡大、今や我が国有数のイデオローグとなった感が強い同氏は定年を機に三井物産戦略研究所所長を退き、この4月、東京・九段に念願のプライベート・ライブラリー「寺島文庫」を開設した。もちろん、これまで同様、日本総合研究所会長、多摩大学学長という立場からの発信も続けている。
 寺島氏が、鳩山由紀夫首相の個人的なブレーンであることは、周知の事だ。最近例を挙げる。寺島氏はオバマ米大統領来日直前の11月5日夜、官邸執務室で鳩山首相と差しで会い、2時間半に及ぶブリーフィングを行なっている。同氏は「オバマ大統領訪日に際した鳩山政権の外交政策についての見解」と題されたメモを基に、首相が日米首脳会談において大統領に語るべきことをレクチャー。そこには当然、懸案の沖縄県・普天間飛行場移設問題に関する基本的な考え方を示し、採るべき政策シナリオも書かれていた。
 即ち、「既存の日米合意どおり実行することを受け入れ、その代わりに中期的な日米安保の見直しを含む日米の戦略対話(21世紀の日米同盟の進化を図る二国間会議)をスタートさせることを実現するという考え方」を進言しているのだ。こうした「寺島助言」もあってか、鳩山首相はシンガポールでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席、帰国してから、それまでの「日米合意見直し・決論は年内にこだわらない。来年1月下旬に実施される名護市長選挙に結果を見てからにしたい」を軌道修正している。この名護市長選挙(1月24日実施)とは、宜野湾市にある普天間飛行場を名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沖合に移設する日米合意受け入れ派の現市長と反対派候補が激突することである。
 政府の外交・安保政策が、地方の首長選挙結果に左右されるということは、同政策の継続性という国益の観点からすると、明らかに間違いである。従って、嘉手納空軍基地との統合論を主張してきた岡田克也外相と現行案支持を明らかにした北沢俊美防衛相は、立ち位置は異なるものの、「年内結論」で一致している。そこに「寺島助言」もあって、鳩山首相は、いま日米両国の外交・安保政策当局者間で進められているワーキンググループの答申を得たうえで「できるだけ早い時期に結論を出したい」に変わったのである。
 さて、件の寺島氏だが、11月26日夜、再び官邸で鳩山首相と会談している。そして現在訪米中の同氏は12月1日、ニューヨークからワシントンに入る。ご本人は「首相密使」説を否定するが、タイミングが出来すぎている。ワシントン滞在中、ブルッキングス研究所、戦略国際問題研究所(CSIS)などシンクタンクの幹部と意見交換をすることになっている。が、それは表向きのことであって、実際は今回の寺島訪米を持ち掛けたルーク駐日公使(政治担当)の求めに応じて、持論の「東アジア共同体」構想を米側の要路に説明するためである。同時に、ホワイトハウスのナンバーワン、ラーム・エマニュエル大統領首席補佐官周辺とも接触するはずで、実質的には首相の「密使」と言っていいだろう。そして「寺島助言」通り、鳩山首相は、18日にデンマークのコペンハーゲンで開催されるCOP15(国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)首脳会議出席前後に、「普天間基地の辺野古移設」を条件付きで受け入れを発表することになるはずだ。その条件とは、日米地位協定の改定交渉開始、3年毎に在日米軍再編を見直す、である。   (11月30日記)