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なぜ「トップセールス」なのか

 縁があって講談社が1月からスタートさせたウェッブサイト「現代ビジネス」に週1回、寄稿している。直近の「日本企業はなぜサムスン、現代に負けるのか―得意の『原子力』でも韓国に負けた」(2月27日アップ)に書いた記事がそれなりの反応があって、驚いている。その内容に関心がある向きは、是非とも覗いてみていただきたい。
 要は、「原発大国」である日本が、昨年12月のアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の総額1兆8300億円原子力発電所(4基)の入札で韓国電力(KEPCO)をプライム・コントラクターとする韓国企業連合に、日立製作所とゼネラル・エレクトリック(GE)社の日米連合と仏アレバ社中心のフランス企業連合が敗れたこと、そして今年2月のベトナム政府の原発プロジェクト第1期工事(2基)約7500億円商戦でもロシア国営企業ロスアトムに東芝・日立・東京電力など"オールジャパン"で臨んだが敗退したことを記した。
 そして原発ビジネスの低迷は、日本の産業界には戦略的な産業構造ビジョンが欠落していることが最大の理由だとして、事業コストの圧縮、法人税現、人材の競争力強化、産業政策の積極化、企業立地支援、首脳脳外交によるトップセールスの必要などを挙げた。  
 まさに筆者の記事がアップしたその日の『読売新聞』(27日付夕刊)が一面トップで「ベトナムへ原発売り込み―首相、週明けに親書」と報じ、その他の主要紙は翌日朝刊で後追い記事を掲載したのである。各紙記事によると、鳩山由紀夫首相はベトナムで計画されている原発建設事業での日本企業受注を目指し、自らトップセールスに乗り出す方針を固め、グエン・タン・ズン首相に親書を送り、日本の原発の売り込みを直訴するというのだ。  
 なぜ、首脳によるトップセールスが必要であると書いたのか。アビダビ商戦では韓国の李明博大統領が昨年末に自ら現地に乗り込み、受注と引き換えに政府が60年間の運転を人材派遣などで保証することや工事が遅れた場合の政府支援を約束したのだ。受注できなかった日本やフランス側は韓国企業連合の異常なダンピングが敗因と言い募ったものの、ツーレートだった。また、ベトナムでの第1期工事を獲得したロシアについても、ズン首相のモスクワ訪問時、会談したプーチン首相はロシア製原子力潜水艦供与を含む軍事協力を「切り札」にして説得したことが奏功したのである。中国と国境を接するベトナムの歴史的、かつ微妙な対中関係を"利用"したロシアの作戦勝ちである。  
 遅まきながら、日本も首脳セールスの必要を認識したからこその「鳩山親書」なのだろう。では、日本に明日の将来を創る戦略的な産業構造ビジジョンがあるのか。先に、仙谷由人国家戦略担当相は『朝日新聞』とのインタビュー(2月24日付朝刊)で「これまで先進国や途上国の動きを、指をくわえて見ている傾向があった」としたうえで、今後は「国がトップセールスを含めて企業を支援し、国家同士の信用を補完したい」と述べていたのだ。  
 遅くはない。まさしくオールジャパンの官民一体となって売り込みという「国家戦略」なくして日本の将来はない。まさに原発ビジネスが、それを如実に物語っている。80年代、世界の原発市場を席巻した米ウェスティング・ハウス(WH)社は今や東芝の傘下にあり、GE社は日立と日立ニュークリア・エナジーを設立、仏アレバ社も三菱重工と提携している。つまり、日系企業が世界の「ビッグスリー」なのだ。にもかかわらず、今後、新規導入を検討している国は20ヶ国を超える世界市場で負け続きというのには理由がある。
 韓国と比べてもその差がハッキリしたバンクーバー冬季五輪でのメダル争い。何も民族主義を煽るつもりはない。が、現在の厳しい経済情勢、国際競争力の低下、そして政治の不安定さを日々見せつけられている国民の多くは、どうしてこんなことになってしまったのか、と感じているのだ。特効薬はない。それでもこの閉塞感を打開しなければ、明日の日本はないことだけは確かである。     (3月1日)