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小沢一郎氏の「究極目標」

 民主党の小沢一郎幹事長は、いったいこの国をどうしようとしているのか。第5東京検察審査会は4月27日、小沢氏の政治資金規正法違反(虚偽記載)事件の共犯容疑を不起訴処分とした2月4日の検察当局決定は妥当ではなく、「起訴相当」であるとの議決を発表した。
 「政治とカネ」のくびきから逃れられない小沢氏を幹事長に据えたままで7月の参院選を戦えるのかという声が党内から少なからず上がっているものの、鳩山由紀夫首相は小沢幹事長に続投を求めた。確かに、党内だけでなく閣内からも表立っての「小沢降ろし」の動きはない。だが、現在の「小鳩体制」のままで参院選まで突き進むのか、については異論がある。所謂「リセット論」である。鳩山首相が沖縄県宜野湾市の普天間飛行場移設問題でクラッシュして退陣を余儀なくされ、同時に小沢氏も幹事長辞任に追い込まれるのは必至という見方が根強くあるのだ。
 「安倍(晋三元首相)だって1年やったのだから、僕だってそれぐらい、できればそれ以上やりたい」と親しい者に漏らした鳩山首相は、たとえ内閣支持率が一桁に下落しても自ら首相の座を降りることはないし、まして今日あるのは小沢氏のお陰だと心から感謝しているので"小沢切り"などあり得ないとの見方をする向きも少なくない。連日、メディアに「普天間問題」でバッシングを受けているのに全くめげていない。この数日内に官邸で鳩山首相に会った人物の受けた印象である。さらに言えば、小沢氏についても、「候補者の公認権と選挙資金の配分権」を握る幹事長を選挙前に自ら手放すことなど考えられないというのが同党関係者の一致した見方である。やはり「小鳩体制」存続の可能性が高いと言っていい。
 では、現状維持で参院選に突入した場合、その結果はどうなるのか。民主党が改選議席53を維持できると見る永田町関係者は皆無である。社民党が連立を離脱しない前提に立てば、民主、社民、国民新党の与党3党で参院過半数59議席を制することも難しいというのが現状のレベルにある。社民党は改選議席3のうち2議席(非改選議席2)、国民新党が改選議席2のうち1議席(非改選議席3)であれば、民主党は非改選議席が62なので51議席確保が至上命題となる。が、現時点では50議席割れどことか、良くて40議席台前半、下手すると30議席台後半もあり得るという厳しい状況にあるのだ。改選議席第1党の座は自民党(改選議席38・非改選議席33)に譲り渡すことになる可能性が強い。
 そうした極めて危機的な情勢にあるにもかかわらず、なぜ小沢幹事長は複数人区の複数候補擁立といった強気の選挙戦略・戦術を変えようとしないのか。一例を挙げてみる。京都選挙区(定数2)には環境問題のエキスパートとして知られる福山哲郎外務副大臣という現職がいるにも拘らず、敢えて衆院議員(近畿ブロック選出)の河上満栄氏を2人目の公認候補として擁立したのだ。小沢政治塾出身の「小沢ガールズ」である。もちろん、民主党京都府連の反対を押し切ってのことだ。こうした例は静岡、茨城、長野、岐阜、兵庫などの2人区、埼玉、神奈川などの3人区にも見られる。現職がいる選挙区に強引に新人を押し立てているのだ。どの選挙区にも共通していることは、2人目の公認候補者が小沢系ということである。つまり、こういうことではないか。
 たとえ参院選で民主党が改選議席を大幅に減らしても、小沢幹事長の決断に必ず従う勢力が増えるのであればいい、そのための参院選である、と。では、いったい何のために?という疑問が生じる。その答えを得る上で参考になるのが、2月26日に都内のホテルニューオータニで持たれた極秘会談である。小沢幹事長はその夜、かつて細川護煕政権(非自民連立8党派政権)時代の盟友だった市川雄一元公明党幹事長のセッティングで創価学会の秋谷栄之助前会長と正木佳樹副会長(前東京総長)と会い、参院選後の連立枠組み協議まで踏み込んだとされる。会談内容について裏取りする術はないが、一説では、参院選に向けて民主党への創価学会からの裏資金提供と選挙後の公明党の閣外協力のバーターが話し合われたという情報すら取り沙汰されている。繰り返すが、確認できた情報ではない。焦点は、民主党を軸とした連立与党敗北という結果が判明したその瞬間から連立政権の枠組み組み換えを前提とした民主党代表の後継選出、それに伴う幹事長など執行部人事問題である。
 鳩山首相は選挙敗北の責任を取って退陣、小沢幹事長も自らの連帯責任を理由に辞任するはずだ。そして後継代表には「数の論理」から菅直人副総理・財務相が選出され、「余人を持って代え難い」として小沢氏が幹事長に再指名される。そこからが小沢氏の「瞬間芸」である。公明党とはパーシャル連合で合意を取り付け、現在の連立のパートナーである社民党を無条件に切り捨て、国民新党とは政策協議を通じて引き続き連立残留で合意し、残りの各新党と自民党の中に手を突っ込むのだ。注目すべきは、平沼・与謝野新党の「たちあがれ日本」へのアプローチである。小沢氏と与謝野馨元財務相は今でも気脈を通じていると見るべきではないか。両者の間に渡邉恒雄読売新聞本社グループ会長兼主筆が介在すれば、現在の2人は07年秋の「大連立」騒動以来、関係が悪化しているとされるが、その修復も十分あり得る。「自主憲法制定」と「消費増税」の2本柱で、ゆるやかな新保守勢力の結集が可能となる。こうしたことを企図しているとすれば、現在のよく見えてこない小沢氏の「考え」も何となく理解できるのではないか。党内の仙谷由人国家戦略担当相など反小沢勢力が同調できないというのであれば、どうぞ出て行って下さい、と、その時、小沢氏は言い放つのではないか。7月参院選挙後に全てが分かる。     (4月30日)