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全ては民主党の獲得議席次第だ

 第22回参院選挙における民主党の獲得議席が菅政権のツートップである菅直人首相と仙谷由人官房長官の命運を握っていることは、ここで改めて指摘するまでもない。菅首相は6月22日、日本記者クラブ主催の9党首討論会で、同党の目指す議席を「54プラスアルファ」と答え、事実上の勝敗ラインとした。同党の改選議席54は、実に微妙な数字である。私が編集発行する『インサイドライン』(6月25日号)で紹介した選挙予測も「54±3」であり、『朝日新聞』(6月26日付朝刊)が紹介した情勢調査でも「民主、過半数微妙―50議席台前半か」とあった。だが、『日本経済新聞』(同日付)の情勢調査は「民主"改選54"上回る勢い」と報じ、一方では『読売新聞』(同日付)の参院選序盤情勢分析では「獲得議席は50程度にとどまる可能性」と書いている。つまり、高めに見た『日経』が57、低めの『読売』は50、その中間の『朝日』が50台前半というのが主要紙の見立てである。私が「54±3」と書いたのは、もちろん各紙の情勢調査の結果が判明する前のことではあるが、当たらずとも遠からずということになるのではないか。参院選挙の結果がこの範囲内であれば、菅首相は9月の民主党代表選で再選されることは確定的である。
 となれば、次はいつ、何を争点に菅首相が衆院解散・総選挙に踏み切るのかが最大の関心事となる。結論を先に言えば、11月28日の沖縄県知事選挙前に投開票日を設定した衆院選挙になるはずで、その場合、焦点の「消費増税」だけでなく、「普天間」もまた争点にして国民に信を問うということになるのではないか。具体的には、沖縄県宜野湾市の普天間飛行場を先の日米合意通りに名護市の「辺野古周辺」に移設するというものだ。辺野古沖合を埋め立てて滑走路を建設することを基本とし、米軍キャンプシュワブの陸上部をどう利用するのか、埋め立ての工法をどうするのかなどは、8月末までに日米専門家・実務者の協議に委ねるというものである。注目すべきは、私が承知している限りでは、仲井眞数弘知事はすでに埋め立てを許可することを決めており、菅首相が9月の民主党代表選で再選された場合、その直後に発表するというのである。当然、地元の名護市長、同市議会からの反発が起こるのは容易に想像できるが、同県北部地域への巨額な経済支援を政府が約束することを条件に許可する方針を密かに固めているというのだ。国外移設を強く主張する伊波洋一宜野湾市長が知事選立候補の意向を示しているが、再選を目指す仲井眞知事は埋め立て認可によって万が一敗れても止むを得ないと腹を括っているという。日米合意現行案実現を総選挙の争点にすると同時に、「消費増税」もまた前面に押したたて衆院選挙を戦う腹積もりである。
 この点については、菅首相が6月17日の民主党マニフェスト(選挙公約)発表の記者会見で「税率については、自民党の挙げている10%を参考にさせていただきたい」と発言したことが重要である。参院選に於ける野党第1党の自民党との争点を"無力化"する意図と同時に、党内の反菅グループを束ね、消費増税反対派でもある小沢一郎前幹事長に対する牽制でもあった。言わば菅首相の「政局発言」であった。そして狙いも悪くなかった。だが、菅-仙谷-枝野(幸男幹事長)の新トロイカ体制の予想を超えた反発が、特に女性の有権者と無党派層から巻き起こり、NHKの世論調査(25〜27日実施)によれば、菅内閣の支持率は前月比マイナス12ポイントの48%まで急落したのだ。そこから菅首相発言は揺れ始める。その典型が、26日(現地時間)に訪問先のカナダで同行記者団に「消費税を含む税制改革の議論を始めようと提案している。呼びかけるところまでが提案だ」と語ったことだ。この後退はまさに「発言のブレ」と受け止められた。こうしたことから、民主党執行部の一部に「50議席を割り込むこともあり得る」との悲観的な見方をする向きも出てきた。事実、こうした菅首相の「ブレ」を貴貨として小沢前幹事長は28日、遊説先の愛媛県今治市で「選挙で政権を取った(鳩山由紀夫前)内閣で『4年間は上げない』と言った。菅総理がどういうお考えで消費税ちゅうことを話しているか分からない。私個人としては、国民の皆さんと約束したことは、どんなことがあっても守るべきだと思っている」と、批判のボルテージを上げたのだ。一気に勝負に出たのである。
 小沢氏の「菅批判」の意図するところは明らかである。参院選で民主党が50を下回った場合に菅氏の「消費税10%」発言の責任追及と枝野執行部の交代を求める布石である。仮に50台前半であっても、9月の代表選挙前後に行われることになる内閣改造でのイニシアチブ確保を目指すものだ。このあり得る「党内抗争」の観点からも、民主党の獲得議席が、今後の参院選→選挙後政局→代表選挙→衆院解散・総選挙に向けて結節点となるのだ。
 そもそもの菅―仙谷―枝野ラインの腹案は、54議席をクリアしたうえで参院選挙後に消費税を含む税制抜本改革のための与野党協議機関を設置、座長に与謝野馨元財務相(たちあがれ日本共同代表)を起用し、同党を平沼赳夫代表グループと与謝野・園田(博之幹事長)グループに分断したうえで与謝野グループを連立与党に迎えるというものであった。それは即、現在の連立のパートナーである国民新党(亀井静香代表)の連立離脱を意味する。もともと新トロイカは亀井氏の念願である郵政改革法案の通常国会会期中の成立に否定的であった。であればこそ、同党が離脱すれば参院選挙後の臨時国会召集、同法案の再提出・成立させる必要がなくなる、まさに一石二鳥と考えていたのだ。ところが、選挙結果次第では波乱政局になる。新トロイカの思惑に暗雲が立ち籠めてきたのである。いずれにしても、小沢前幹事長にとって政治生命を賭けた最後の大政局が来るのかどうか、全ては7月11日の投開票にかかっているのだ。         (6月29日)