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7・28衆参同日選の可能性大!! !!

 2019年が明ける。干支は亥年。イノシシから突然、故金丸信元自民党副総裁を連想してしまった。金丸氏がよく使ったセリフに「山より大きなイノシシは出ぬ」があった。容れ物より大きな中身はあり得ない、という大意である。世の中のことは大概、とんでもなくびっくりするようなことは起きない、と自分流に解釈している。金丸氏は「ボケとツッコミ」で例えるなら、ボケの味があった。自民党国対委員長時代、野党が「寝て」国会が止まっても「山より大きなイノシシは出ぬ」と泰然自若としていた。

 19年は、果たして山より大きいイノシシが出てくるのだろうか。政治カレンダーで判明しているのは、春の統一地方選、夏の参院選、秋の消費税率アップの可否である。不確定部分として、北方領土返還、米中貿易戦争(米中ハイテク覇権抗争)の行方、衆参同日選挙の断行などが挙げられよう。いずれにせよ激動の1年になりそうな予感がする。特に、選挙のある年は結果次第で山より大きいイノシシが出てくることもあり得る。

 すでに動き出した選挙を巡る話からペンを進めたい。19年は12年に一度の「亥年選挙」に当たる。統一地方選は4年に一度、参院選は3年に一度半数が改選されるが、4と3の最小公倍数である12年ぶりの亥年選挙が巡ってきた。国会議員から地方議員まで、選挙で落ちたらただの人になるので、いつもの年と気合が違っている。まさに猪突猛進で臨む気構えでいる。

 参院選は自民党が苦戦を強いられそうだ。前回取りすぎているから、常識的には反動が来る。加えて、統一選と同じ年にある参院選は「選挙疲れ」から政権与党が苦戦することが多いという説(亥年現象)があり、実際に第1次安倍政権の07年参院選では自民党が大敗した。

 この説を提唱したのは、筆者が敬愛する故石川真澄・元朝日新聞編集委員(政治担当)である。彼は政治報道に初めて数量的分析を導入した人物だ。筆者は何のテーマであれ、まずチャート(相関図)を描くようになったのは、彼からの強い影響による。

 さて、参院選を迎える自民党は出来る限り取りこぼしを防ぐ陣形を取らざるを得ない。暮れも押し迫った12月18日、自民・公明両党の甘利明、佐藤茂樹両選対委員長が国会内で会談し、参院選に関する協力で基本合意した。16年の前回選挙より準備を前倒したのは、強い危機感の表れである。

 合意内容は、公明党が公認候補を擁立する7選挙区のうち、埼玉、神奈川、愛知(改選定数4)、兵庫、福岡(同3)の5選挙区で自民党は2人目の候補を擁立しないだけでなく、公明党の候補を推薦する。

 この5選挙区は公明党単独で当選圏入りするのは難しいとされ「自民党の推薦があると団体回りがしやすくなる」と,公明党が強く要望していた。自民党は埼玉と福岡で2人目の候補者擁立を模索する動きもあったが、これを警戒した公明党幹部が「そうなら選挙協力全体が壊れる」と自民党を牽制していた。

 そのギブ・アンド・テイクで、公明党は改選数1の「1人区」(計32選挙区)で自民党候補を推薦する。与党は前回参院選で勝利したものの、1人区の11選挙区で自民党が野党共闘に敗れた。その教訓を踏まえ、協力態勢を早期に固めた。甘利氏は「特に1人区については自公協力が不可欠だ」としたうえで「自公で確実に過半数を取ることが至上命令だ」と言っている。

 与党が動けば野党も動く。同じ18日、立憲民主党(枝野幸男代表)は常任幹事会を開き、衆院会派の「無所属の会」(岡田克也代表)の安住淳元財務相、中村喜四郎元建設相、江田憲司元民進党代表代行ら6人が同党会派に加わることを了承した。岡田氏は1月の通常国会召集前にドッキングする意向だ。野田佳彦・元首相も同調するとみられる。再結集の背景には、離合集散のプロフェッショナル、小沢一郎自由党代表の影がちらちらする。小沢氏は今、オール野党の結集を目指して水面下で動いている。

 小沢氏はすでに後期高齢者の域に突入し、19年には喜寿を迎える。友人の新聞記者は、小沢氏が国会の理髪店で白髪を黒く染めている姿を目撃している。振り返れば、筆者が壮年の頃、日本の政界は「小沢」対「反小沢」の対立軸で動いていた時期があった。政界の出来事は、この人物を外して語ることができなかったのである。今では往事茫々の感があるが、昔取った杵柄は忘れられないらしい。規模は縮小したものの、ご老体に鞭打ってシコシコ「暗躍」しているさまは、多少の皮肉を込めて言わせてもらえば「お年寄りの鑑」と言えまいか。うんざり顔で「また小沢かよ」と言うなかれ。

 旧民主党時代のトラウマから枝野氏は小沢氏とタッグを組むことに消極的だとされる。だが、福山哲郎幹事長は枝野氏ほど強い小沢アレルギーはない。小沢氏が仕掛ける「野党共闘」の成否は、枝野氏より福山氏がキーマンとなりそうだ。

 枝野氏は最近、筆者の友人と会食した際「僕はたとえ唯我独尊と言われようが、現在約450人しかいない地方議会議員の現状を考えると、全国都道府県の組織結成に全力を挙げることが将来、政権の受け皿となる野党第1党の最も優先すべきことと考えている。従って、単に野党統一候補擁立という目先のニーズには与しない」と語っている。どうやら野党共闘より自党ファーストに関心があるようだ。換言すれば、仮に衆参同日選挙になれば、国民民主党、共産党、自由党との野党共闘は瓦解する可能性が強い。

 一方、参院選単独の場合、野党共闘は1人区でどれだけ成立するかがポイントになる。政権批判票が統一候補に収斂すれば「山より大きいイノシシが出る」ことにもなりかねない。参院選は政権選択選挙ではないが、政権与党が大敗すれば執行部の引責辞任につながる。

 安倍政権としては、何としても小さいイノシシで済ませたい。議席の目減りを最小限にしたい。そのため永田町では衆参同日選挙の可能性が強まったとの見方が広がっている。安倍晋三首相はもともと同日選を視野に入れていた。北方領土返還・日露平和条約締結の進展に手応えを得ていた。1月21日に予定されるモスクワでの安倍・プーチン会談で、北方2島(歯舞・色丹)返還、日露平和条約締結で基本合意に持ち込み、そのうえで選挙直前の6月30日、東京で行われる日露首脳会談でその旨を明記した日露共同声明を発表する段取りを描いている。ただ、4島一括返還を求める保守勢力の反発も予想されるため、日露共同声明の是非について国民の審判を仰ぎたいと衆院解散に踏み切り、同日選に打って出る。これまで慎重論だった菅義偉官房長官も選挙戦略の転換を図ったとみられている。歴代首相の誰一人実現できなかった北方領土交渉の進展・解決という外交成果は、選挙を戦う上で有力なプロパガンダとなるからだ。

 もう一つのシミュレーションも想定される。先の衆院選で約束した10月からの消費増税について、昨今の株価暴落にみられる世界経済の減速懸念に鑑み三度目の見送りに踏み切らざるを得ないという苦渋の決断をしたとして衆院解散の大義名分にするケースだ。19年には米国経済が下降局面に入るという前提で、河内隆内閣府事務次官直轄のもとで田和宏政策統括官、中村昭裕内閣府審議官を中心とするチームが密かに「万が一」に対応する準備に入っている、との情報も得ている。

 安倍官邸が今考えている衆参同日選挙のキーワードは「女性国会議員の増産」である。高橋はるみ北海道知事、太田房江元大阪府知事を擁立するほか、テレビのワイドショーで引っ張りだこの美人政治学者・三浦瑠璃東京大学政策ビジョン研究センター講師を自民党選対が必至で口説いている。

 通常国会の召集は確実視されていた1月4日(6月2日会期末)説が消えた。代わって、1月28日召集(6月27日会期末)が確定したことも衆参同日選説に拍車をかけている。会期を1週間程度延長すれば、会期末に衆院を解散し、7月28日、同21日のいずれでも同日選が可能となるからだ。

 19年の漢字は「激」になるのかな。因みに、筆者の干支はイノシシである。

(2018年12月27日)