12月15日付 「グリーン成長戦略」の本気度ー産業港湾を水素利用ので結節点に。

204回通常国会は、来年1月18日に召集される。 
同日に菅義偉首相の施政方針演説、麻生太郎財務相の財政演説、茂木敏充外相の外交演説など政府4演説が行われる。 
 同時に2020年度第3次補正予算案と21年度当初予算案が国会に提出される。そして一日あけて20日から2日間、衆参院本会議で各党代表質問が行われる。通常国会における与野党攻防の主戦場は、その後に開かれる衆参院予算委員会である。 新型コロナウイルス感染の拡大防止が年初にどのような状況になっているのかにもよるが、争点は政府が12月8日の臨時閣議で決定した事業規模73.6兆円の追加経済対策を巡るものとなる。 「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」と名付けられた今回の追加経済対策で際立ったのは2つ。①脱炭素の温暖化対策、②デジタル社会実現――であり、ともに菅政権の看板政策である。 
 菅首相は4日の記者会見で、「50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標に向け、環境分野の技術革新などに投資する企業への支援策として2兆円基金を創設する」と語った。 ▶︎

▶︎2兆円基金は経済産業省(安藤久佳事務次官)が所管する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に設置される。 本稿では、2本柱のひとつ「グリーン成長戦略」の本気度を探ってみる。 ここに来てメディアが盛んに報じるようになったのは、再生可能エネルギーとしての「水素」である。 そもそもは安倍晋三前政権下の昨年6月に大阪で開催された20カ国・地域(G20)首脳会議直前の関係閣僚会合で、経産省の要請を受けて国際エネルギー機関(IEA)が発表「水素レポート」だった。 
 IEAが水素の現況を定量的に分析し、将来展望や提言をまとめたものだ。 原発再稼働問題を抱える政府は水素、洋上風力、燃料アンモニアなど重点分野を設定しているが、中でもクリーン水素の商用需要の喚起に力点を置く。具体的には産業分野、既存のガスインフラ、トラック・バス等向けの水素利用と、国際貿易に向けた輸送ルートの確立である。 そして菅政権らしいのは、産業港湾を貯蔵・輸送基地として水素利用の結節点とすることだ。 
 経産省外局の資源エネルギー庁と国土交通省港湾局が所管する。それは、菅首相の一丁目一番地である「縦割り行政の打破」にもなるのだ。