1月5日付 米国が懸念・日韓関係の現状ー「インド太平洋戦略」と「新南方政策」ぶつかる?

今、ワシントンの外交関係者の間で関心が集中するのは2021年の日米韓3カ国の関係の行方である。 深刻化する米中対立を念頭に置く米国から見ると、関係修復が容易でない日韓関係の現状に強い懸念を抱いている。 改めて指摘するまでもなく、韓国は日本と並ぶ世界最大級の「米常備軍の最前線」である。 
 最も多い日本には約5万4000人が駐留するが、韓国にも約2万6000人駐留する。日韓2国で海外駐留米軍16万人の半分を占める。因みに、北大西洋条約機構(NATO)参加国のドイツに駐留する米軍兵士は約3万4000人、イタリアが1万2000人、英国は9000人だ。 そして重要なのは、韓国が今や軍事大国であるということだ。増加の一途を辿る韓国の国防予算は4兆7000億円に至り、あと数年で日本の防衛予算を抜くとされる。ワシントンで取り沙汰される理由は、そんな韓国を抜きにしてインド太平洋地域における安全保障戦略を考えられるはずがないというものだ。 
 安倍晋三前首相主導で確立された日・米・豪・印による「インド太平洋戦略」(現在、外務省は「戦略」でなく「構想」を使う)の原則や柱と、文在寅大統領が打ち出した東南アジアと南アジアとの関係を拡大する「新南方政策」は対立するのではないかとの指摘がある。平たく言えば、文政権は最大の貿易相手の中国を気にしてインド太平洋構想に参加しないための隠れ蓑にしているのだ。 ▶︎

▶︎米側では、例えばマイケル・グリーン戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長は「日米韓の連携が重要なのは、米韓同盟、日米同盟が密接に結びついていなければ、北朝鮮に付け込まれる心配がある」と、いとも簡潔だ。「米韓両国はインド太平洋戦略、新南方政策について対話している。米韓同盟の将来は明るい」と言うのはマーク・ナッパー国務次官補代理(日本・韓国担当)。 
 一方、韓国側は尹永寛元外交通商部長官が「米国に期待したいのは韓国が非常に特殊な地政学的状況にあることを認識することだ」と語る。 
 柳明桓・元駐日大使は「まずは韓米日に共通の関心事で対話を進めれば、その過程で韓日関係の改善が図られるだろう」と言う。各々のコメントは昨年11月の米CSISと韓国・中央日報社共催のフォーラムでの発言だ。だが先に発表された「アーミテージ・ナイ報告書」に日韓関係への不安が指摘されていることを忘れるべきではない。