3月22日付 米中対立のレッドラインとなった『台湾有事』ー外交トップ会談で激しい応酬 日本に何ができるか」

3月18日、米アラスカ州アンカレジで米中外交トップ会談が開かれた。アントニー・ブリンケン国務長官、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)と、楊潔篪共産党政治局員、王毅・国務委員兼外相が出席した。同会談は尖閣・台湾問題、ウイグル族への人権侵害問題などで激しいやり取りに終始、改めて「米中新冷戦」が浮き彫りとなった。 そのトリガー(引き金)となったのは3日に公表されたバイデン政権の外交・軍事・経済政策の基本指針「国家安全保障戦略」だ。中国が国際システムに対抗しうる唯一の競争相手と断じたのだ。 
 中国側にも兆しはあった。香港の英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(8日付)は次のように報じた。《(中国共産党)中央軍事委員会において習近平に次ぐナンバー2である許其亮将軍は「ツキディデスの罠」に備えるためにさらなる軍事支出が必要だと述べた。
 この「ツキディデスの罠」とは、新興の大国がそれまでの覇権国と交替する際に戦争は不可欠であるという考え方である。》 2015年9月に国賓として訪米した習近平国家主席は訪問先のシアトルで「ツキディデスの罠と言われるようなものは存在していない」と発言していた。▶︎ 

▶︎だがここに至って、中国人民解放軍のトップが米中武力衝突の可能性を排除すべきではないと言ったに等しいのである。さらにブリンケン氏は16日に開催された日米外務・防衛担当閣僚協議で、中国が施行した海警法が台湾海峡の緊張を一段と高めるものと警告を発した。この発言が決定打となった。「一つの中国」政策に基づき台湾問題を「中国の核心的利益」とする習指導部は、相次いで台湾重視政策を打ち出すバイデン政権に危機感を強めている。言わば「台湾有事」が米中の安全保障上のレッドライン(超えてはならない一線)になったのだ。翻って、日本の今の立ち位置はどうなのか。岸信夫防衛相は2月26日、中国の海上保安機関・海警局公船が尖閣諸島(沖縄県石垣市)に上陸する目的で領海侵入した場合、海上自衛隊が「危害射撃」を加えることもあるとの見解を示した。 
 そして日米安全保障協議委員会共同文書に「日米安保条約第5条の下での尖閣諸島を含む日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメント」が明記された。米国から「責任と負担の共有」を求められる日本に何ができるのか。