5月17日付「習氏の戦略揺るがす少子高齢化ー生産年齢人口過去10年間で3・2%減」

中国の少子高齢化は想像以上に深刻である。国家統計局が5月11日に発表した2020年の国勢調査によると、総人口14億1177万8724人のうち65歳以上は全体の13.5%、出生数は約1200万人と前年比20%減少した。
 中国の国勢調査は10年に1度実施される。65歳以上の高齢者は、同国の“先進国化”に伴い平均寿命は急伸して1億9063万人に達し、この10年で約60%増えたことになる。 一方、少子化については1979年に実施された「一人っ子政策」によって急進したとされる(2016年に2人目の出産を認めたが、翌年から出生数は減少の一途を辿っている)。
 出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計出生率)は1.3に留まっている。安倍晋三前首相は『文藝春秋』(15年12月号)の「アベノミクスの成否を問う『一億総活躍』わが真意」の中で、希望出生率1.8の実現を熱っぽく語った。筆者は当時、団塊の世代(1947~49年生まれ)の約800万人が後期高齢者医療の対象75歳になる「2025年問題」もあり、安倍政権の人口政策に大いに期待した(日本の出生率は約1.4だった)。だが出生率は上がらず、15歳未満の子どもの数は今年4月1日時点で1493万人であり、0~2歳が265万人と少子化が進んでいるのが現状である。▶︎

 ▶︎中国の少子高齢化が極めて深刻なのは、国内の生産活動を中心となって支える生産年齢人口(15~64歳)が過去10年間で3.2%減少したことだ。巨大な消費市場と豊かな労働力、そして先端技術の急速な発展を背景に習近平指導部が目指してきた「世界に冠たる中国」の実現が、その根底から揺らぎかねない事態に直面している。
 では、中国、日本同様に少子高齢化が進む米国はどうなのか。米疾病対策センター(CDC)が5日に発表した暫定値によると、20年の出生数は360万5201人で前年比4%減。6年連続の減少で79年以来の低水準となり出生率も1.64と過去最低である。
 これまで米国は、変革期の危機に直面すると復活のための「奇策」を講じて乗り切ってきた。80年代のレーガン政権下、経済と技術領域で日本にキャッチアップされると「異質論」を持ち出してバッシングした。それと同じように今、中国を戦略的競争相手として対中強硬策を繰りだしている。米国の国内総生産(GDP)50%超えが、実は「レッドライン」なのである。