6月7日付 菅首相周辺に「9・16衆院解散説」 ワクチン接種と五輪開催を総選挙の弾みに

東京五輪・パラリンピック開催の可否が政治バトル化しているようだ。朝日新聞(5月26日付)が正面切って社説「夏の東京五輪―中止の決断を首相に求める」を掲載し、その賛否を巡り、大きな反響を呼んだ。案の定、翌週発売の「週刊文春」(6月10日号)は、社説掲載に至る経緯を暴露した。
 立憲民主党の枝野幸男代表は遡る5月23日、オンライン形式による同党富山県連大会で「命を犠牲にしてまで五輪に協力する義務は誰にもない。命を犠牲にしてでも協力しろなどと迫る権限は誰にもない」と述べ、7月開催予定の東京五輪実施に疑問を呈した。
 奇しくも、テレビ・プロデューサーのデーブ・スペクター氏が同27日にツイートした「ブルース・ウィルスのドラえもん」発言もネット上で大話題となったという。国際オリンピック委員会(IOC)のディック・パウンド最古参委員が東京五輪について「アルマゲドン(人類滅亡)が起こらない限り開催される」と海外紙に語ったと報じられたことへの投稿だ。 
 米ハリウッド映画「アルマゲドン」に主演したブルース・ウィリスを引き合いに出したうえ、しかも「ウィリス」を「ウィルス」に変えて「ブルース・ウィルスのドラえもん、何とかして!」とツイートした。しかも、同氏の投稿に「新国立競技場全体にタイムふろしきをかぶせて建設前の姿に戻してほしい」という呟きもあったというのである。

件のデーブ氏は米民主党支持者とされ、社論で「五輪中止」を掲げた米紙ワシントン・ポストの愛読者でもあるそうだ。翻って、東京五輪開催について「中止」か「開催」(含む無観客)かという現実的な二択を求める我が国メディアの世論調査を見ると、平均で56%の国民が中止を、41%が開催を支持している。大雑把に言えば、自民党支持層は五輪開催支持、反自民層が開催中止、そして浮動票は反自民寄りのスタンスではないか。
 胸中「やるしかない」と決めている菅義偉首相にとって重要なのは、41%の五輪開催支持者たちである。つまり菅政権支持基盤の30%に浮動票の40%の4分の1である10%を足した支持者のスタンスなのだ。平たく言えば、菅首相にとっては五輪中止の方が支持者を失う可能性が高い一方、新型コロナウイルスワクチン接種の一層の進展によって、今秋の総選挙で浮動票の一部を自民党支持に取り戻せると判断しているのだ。