7月5日付「中期防改定選挙公約明記、自民の党内論議見ると信じ難いー菅首相は米国に防衛力強化を約束したが・・・」

「日本は同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意した」――。4月に米ワシントンで行われた日米首脳会談後に発表された共同声明に盛り込まれた文言である。菅義偉首相はジョー・バイデン大統領に対してまさに約束したのだ。我が国の防衛力強化は、2018年12月に閣議決定された新たな「防衛計画の大綱」(「中期防衛力整備計画=中期防)に見ることができる。そこには《大綱に示された防衛力の目標水準等を踏まえ、5年間を対象とする中期防衛力整備計画(中期防)を策定し、同計画に従って、それぞれ各年度の防衛力整備を実施》と書かれている。 
 要は、日本を取り巻く厳しい国際情勢に即した中期防を5年毎に見直すということだ。 そして、この「自らの防衛力」が肝である。米国は対中軍事戦略における海上防衛ライン「第1列島線」(九州・沖縄~尖閣諸島~台湾~フィリピン~南シナ海)確保のため、国防総省を中心に開発中の対空迎撃中距離ミサイルの在日米軍基地配備を検討している。 
 一方、航空自衛隊は来年3月に離島防衛対地・対艦ミサイル(JSM)を導入、2024年から配備する最新鋭ステルス戦闘機F-35Bに搭載する。▶︎ 

▶︎バイデン政権が日本に求めていることはシンプルだが、容易ではない。現下の中国の脅威に対処するために防衛装備品などの購入に充てる防衛予算の増額はもとより防衛力整備そのものに傾注すべきだ、それが日米同盟の証しであると。この「宿題」があったからこそ、先ずは日米首脳会談の1カ月後に岸信夫防衛相が「防衛予算の国内総生産(GDP)比1%枠にこだわらない」と発言したのである。 
 さて、肝心の中期防である。その中でも注意を喚起したい表現は「多次元統合防衛力」として《全体としての能力を増幅させる領域横断(クロス・ドメイン)作戦により、我が国の防衛を全うできるもの。平素から事態の特性に応じた柔軟かつ戦略的な活動を常時継続的に実施可能なもの。》と、2点が指摘されている。だが通読すれば分かるように、官僚用語が多すぎて意味不明瞭だ。現実問題として、北朝鮮のミサイルが飛来したらどう対処するのかの言及がないし、領域横断作戦と焦点の「敵基地攻撃能力」保有はどう関わるのか。自民党は次期衆院選で中期防改定を選挙公約に明記するとされるが、党内論議の現状からすれば俄かに信じ難い。