7月19日付「菅首相3つの衆院選シナリオー命運握るワクチン、支持率『危険水域』で交代論も」

7月23日、東京五輪・パラリンピックが開催される――。 「東京五輪」と「ワクチン」を両輪とする菅義偉首相の政治決断が吉と出るか凶と出るかは予断を許さない。 現時点で、東京オリパラ後の衆院解散・総選挙の行方を占うと、次のようになる。 
 シナリオ①=菅首相はパラリンピック閉会式翌日の9月6日に臨時国会を召集し、冒頭に衆院を解散する。同28日衆院選公示・10月10日投開票。「オリパラ実施した総選挙」になる。
  シナリオ②=臨時国会で巨額の21年度補正予算を成立させた上で衆院議員任期満了の10月21日に衆院を解散。11月9日公示・同21日投開票。「ワクチン普及・経済対策総選挙」にする。 
 シナリオ③=NHK最新世論調査で内閣支持率33%、不支持46%となり、無観客開催で自民支持コア層が離れ、開催強行で無党派層が不支持に回り、8月半ばには20%台に下落。五輪後、菅氏が総裁選不出馬を決断し、新総裁選出・選挙管理内閣が誕生して10月5日公示・同17日投開票。 支持率が菅政権発足後最低、不支持率は最高となったNHK調査をどう見るかである。菅首相は無観客開催を決断することで無党派層(浮動票)を宥めることを選んだと言える。他方、自民党の伝統的な支持者の苛立ちや離反を買うリスクを背負ったのだ。 ▶︎

▶︎結果的に安心、安全に五輪開催を実施できれば、無観客開催を望んだ浮動票を取り戻せる。しかし、僅か5%前後であるが、観客制限なしの開催を求めた鉄壁な保守層が逃げたのは確実だ。その意味では、無観客開催決定で、インド型変異ウイルス(デルタ株)が今夏に拡大したとしてもオリパラが原因であると非難されるリスクは減少したとも言える。菅氏の「賭け」である。従って現時点では、①が菅政権の「プランA」であり、②は「プランB」である。 
 65歳以上の高齢者へのワクチン接種は7月末までにほぼ完了する。菅氏は10~11月にかけて希望する方すべてを終えることを実現したい、と言明している。  加えて、自民党の二階俊博幹事長は総選挙前にコロナウイルス対策の21年度補正予算30兆円規模の編成に言及した。時間をかけるというのだ。 問題は③である。政権維持の「危険水域」とされる支持率20%台になると、自民党内から「選挙の顔」を代えろとの声が噴出する。やはり菅政権の命運を握るのはワクチンである。