自民党総裁選は9月8日告示・14日投開票の日程で実施される。
結果は明らかだ。菅義偉官房長官が、石破茂元幹事長と岸田文雄政調会長を大差で破り、新総裁に就任する。
そして16日に召集される臨時国会の衆参院本会議の首班指名選挙で第99代内閣総理大臣(首相)に選出される。菅政権の誕生である。
では、なぜこの時期の政権交代であったのか。もちろん、安倍晋三首相が8月28日の記者会見で、体調不良を理由に辞任を表明したからだ。
ところが、永田町では菅氏が総裁選出馬を発表した9月2日直前から早期の衆院解散・総選挙説が主流となり、選挙日程まで記述された「竹下カレンダー」と題されたペーパー(A4版1枚)まで出回った。
「9月29日衆院解散・10月13日公示・25日投開票」説には筆者もその責任の一端がある。
繰り返すが、なぜ早期解散なのか。一言でいえば、「2つの任期」がその理由である。
新総裁の任期は来年9月末の安倍総裁の残る任期であり、現衆院議員の任期はその翌月の10月21日までである。
「2つの任期」があることが新首相の脳裏に早期衆院解散・総選挙をインプットしているのだ。安倍首相の辞任は「2つの任期」問題の解決にはならない。
新総裁→新首相は有権者による信認プロセスを経ていない。取り分け、新総裁が両院議員総会で選ばれることは、今後の政権運営を考えると政治資本面で不安があるということである。
「菅首相」が10月総選挙を断行すれば、同総選挙で選出される衆院議員の任期は24年に先送りされる。
即ち来年9月までの何時であれ、実施される総裁選での緊張感は今とは異なったものとなるのだ。
他方、「2つの任期」に変化がない場合、年が明けてコロナ禍の中で衆院選が近づけば近づくほど当選2、3回生は浮足立つことになる。
特に新政権の支持率が低迷すれば、選挙に勝てる「顔」に替えようという声が党内から噴出し、本格的な総裁選を求める動きが顕在するのは必至である。
15日にも新・立憲民主党(枝野幸男代表)が誕生するが、各選挙区で野党候補者の一本化調整が進まないタイミングで政権・与党が総選挙に打って出るのは常道だ。
付言すれば、「菅内閣」が河野太郎官房長官などサプライズ人事で発足すれば、ご祝儀支持率の60%超もあり得る。