7年8カ月に及んだ安倍晋三長期政権の中で,首相官邸に幹部人事権を牛耳られた霞が関官僚は倦んでいるとの指摘があることは承知している。
だが,8月28日夕の安倍の退陣記者会見から僅か3日後の31日段階で主要省庁は,次期首相が菅義偉官房長官であると想定し,首相秘書官(事務担当)人事を確定していた。
突出した嗅覚と言うべきか,それとも圧倒的な情報収集・分析力と言うべきかはともかく,「菅首相」を念頭に置いた人事である。
具体的には,外務省:河邉賢裕総合外交政策局参事官(1991年入省),経済産業省:荒井勝喜官房総括審議官(91年旧通産省),財務省:寺岡光博内閣官房内閣審議官(前主計局企画担当主計官=91年旧大蔵省)――だ。
各々同期のトップランナーであることは言うまでもない。
それから程なくして警察庁は原幸太郎山梨県警本部長(前刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課長・92年入庁),防衛省が安藤敦史官房審議官(前防衛政策局防衛政策課長・92年旧防衛庁),其々内閣官房出向経験がある2人を内定した。
これぞまさに霞が関と言えば誉めすぎか。▶︎
▶︎それはともかく,自民党総裁レースが菅のぶっちぎり状況になることを読み切っていた証である。
では,安倍首相補佐官兼秘書官(政務担当)として「官邸官僚」のシンボルとされた今井尚哉(82年旧通産省)に代わる人物は誰なのか。
菅が横浜市議時代からの付き合いであり,絶大な信頼を得ている和泉洋人首相補佐官(76年旧建設省)が“第2の今井”になることが確実視されている。
官邸における事実上の首席補佐官だ。
首相秘書官(政務)には,やはり菅が高く評価する田和宏内閣府審議官(84年旧経済企画庁)が有力視される。
こうして見てみると,来るべく菅官邸のシニア・スタッフは,公正を期せば,強力な布陣と言っていい。
特に田和はこれまでに内閣府政策統括官として経済財政諮問会議を担当してきたことからも政策面も受け持つ。
また,例の「コネクティングルーム」疑惑などもあり毀誉褒貶相半ばするが,オールラウンドプレイヤーである和泉は「菅に菅がいない」ではないが官邸の新しい主・菅の「菅的」な役割を担うべく危機管理を担当する••••••(以下は本誌掲載)申込はこちら