第1次菅内閣の顔ぶれからハッキリ分かったことがある。
菅義偉首相は「ポスト菅」を加藤勝信官房長官と河野太郎行政改革相の2人に競わせる腹積もりなのだ。
褒めすぎと言われるだろうが、筆者は「令和改革内閣」と名付ける。
総裁選で菅氏支持をいち早く打ち出した主要5派閥への配慮が際立っているのは否めない。
自民党新執行部の二階俊博幹事長(二階派)、佐藤勉総務会長(麻生派)、下村博文政調会長(細田派)、山口泰明選対委員長(竹下派)、森山裕国対委員長(石原派)からも分かる。
閣僚も細田派5人、麻生派3人、竹下派2人、二階派2人、石原派1人であり、派閥の規模通り割り振っている印象だ。
では、今回の組閣と党人事に菅首相(総裁)独自の人選はないのか。
一瞥するだけでは分かりにくいが、巧妙な人事が隠されている。一例を挙げれば、武田良太総務相(二階派)である。
昨年4月の福岡県知事選は自民党分裂選挙となった。武田氏ら同党県連が推した無所属現職の小川洋氏と、麻生氏が担いだ自民推薦新人の争いの末、小川知事が再選された。麻生氏の地元・福岡に大きな禍根を残した。▶︎
▶︎さらに言えば、菅政権の目玉である行政・規制改革を担う河野行革相は麻生派であるが、片足を菅グループに置いていることを永田町で知らぬ者はいない。
麻生氏が二階氏とソリが合わないだけではなく、菅氏にも蟠りを持っていることも周知の事実である。言わば、麻生氏への牽制なのだ。
そもそも組閣の焦点とされた官房長官人事で、加藤勝信厚生労働相(竹下派)を起用しとことが絶妙な人事である。
18年の総裁選で竹下派は領袖の竹下亘元総務会長と今なお隠然たる影響力を持つ青木幹雄元官房長官は安倍晋三前首相に挑んだ石破茂元幹事長を支持した。しかし、茂木敏充外相主導で加藤氏を含め同派衆院議員の過半が安倍氏を支持した。
竹下派もまた分裂の危機に直面したのだ。こうした経緯を踏まえた菅氏は、加藤氏の祖父・室崎勝造元島根県議会議長と親しかった青木氏の存在を念頭に置き、加藤官房長官を選択したのである。
かつて所属した竹下派(当時の橋本派)対策でもあるのだ。
次は、総裁選出の両院議員総会で石破氏の介添え役だった田村憲久厚労相(石破派)である。党内切っての厚労政策通の同氏を起用することで石破派の自壊を企図しているのだ。