No.619 10月25日号 菅義偉首相の「皇室観」

11月8日に秋篠宮殿下が皇位継承順位1位の皇嗣になったことを国内外に宣言する「立皇嗣の礼」が皇居・宮殿で行われる。昨年の10月22日に英国のチャールズ皇太子ら各国のVIPが参列して行われた即位礼正殿の儀をはじめとした平成の御大典の掉尾を飾る行事として,本来は今年4月19日に行うはずだったが,コロナ禍で延期されていた。当日も三権の長ら出席者を当初予定の7分の1の約50人に絞り,700人以上の出席予定だった祝宴「宮中饗宴の儀」は中止。宮殿「松の間」で行われる式典の中核となる「宣明の儀」では,松の間の扉を開け放し,天皇皇后両陛下と秋篠宮両殿下以外の出席者はマスク着用とするなど,重く厳粛な行事だが前代未聞の様相になりそうだ。2017年成立した退位特例法の国会付帯決議では,安定的な皇位継承や女性宮家創設など皇室が抱える諸課題について速やかに国会に報告するよう求めたが,安倍晋三内閣の皇室所管大臣である官房長官だった菅義偉首相は,即位に伴う一連の行事が終了した後に行うとの答弁を繰り返してきた。立皇嗣の礼終了で,皇室問題の議論は待ったなしの状況になるが,これまで首相自身が自らの皇室観を語ったことはない。しかし,所管大臣として皇室の問題や宮内庁のトップ人事に直接かかわっており,その姿勢から皇室へのスタンスが透けて見える。▶︎

▶︎7年前のアルゼンチン・ブエノスアイレス市でのIOC(国際オリンピック委員会)総会で2020年東京五輪招致が決まった。この時,高円宮久子妃が仏語と英語でスピーチし注目されたが,当時の宮内庁の風岡典之長官(69年旧建設省)が,久子妃が誘致活動にかかわったことに関して宮内庁としては「苦渋の決断だった」「天皇,皇后両陛下も案じられていると拝察した」と記者会見で語った。これに対して当時の菅官房長官は「長官の立場で両陛下の思いを推測して言及したことは非常に違和感を感じる」と強い口調で批判した。
2014年上皇傘寿の記念に宮内庁が企画したサクラと紅葉の時期に実施した「乾通りの通り抜け」で春には5日間で40万人近くの人が押し寄せた。宮内庁は,その年だけのイベントと考えていたが,観光立国推進の旗振り役の官房長官だった菅が,杉田和博官房副長官(66年警察庁)を通じて通年実施を迫ってきた。
植栽や宮内庁の日常業務への影響などの懸念から風岡は,難色を示した。しかし,観光振興の目玉となると見た官邸の強い要請から翌年から通年化していった…(以下は本誌掲載)申込はこちら