No.620 11月10日号 160年ぶりの「米国分断」大統領選

後世の歴史家は2020年米大統領選を,南北戦争(1861~65年)を招来した160年前の第19回米大統領選(共和党のエイブラハム・リンカーンが一般投票で過半数に達しなかったが,選挙人投票で過半数を獲得して第16代大統領に就任。その後,南部サウスカロライナ州が米合衆国から脱退,南部諸州が追随して南北戦争への道を突き進んだ)同様に,米国を分断したターニングポイントとなる米憲政史に残る大統領選だったと記述することになるかもしれない。それほど現職ドナルド・トランプ大統領(共和党)と挑戦者ジョー・バイデン前副大統領(民主党)の選挙戦は国家を二分する熾烈なものとなり,11月7日午前のバイデン勝利宣言後も選挙戦が齎した騒擾状態は収まらず,混乱が尾を引いている。それでも来年1月21日,勝利宣言で「分断から結束へ」を国内外にアピールしたバイデンは第46代大統領に就任する。ルールを遵守せず,品性に欠け,トラブルメーカーであり続けたトランプに対し,常識を弁え,穏当であり,且つ「政治」を知るバイデンに世界中から期待が集まっている。だが,そのバイデンに果たして分断の崖っぷちに立つ米国を救うことができるのだろうか。▶︎

▶︎先ず,言えることは任期1期限りであるバイデンには十分な時間がないということである。新政権の信認選挙とされる中間選挙が22年11月に控えている。その後,民主,共和両党は共に「ポスト・バイデン」を目指し24年大統領選に向けて一直線で突き進むため,バイデンはレイムダックとなる。となると,スタートダッシュするしか選択肢はない。バイデンとて人の子である。日本同様に「レガシー(政治遺産)」を念頭に新政権を立ち上げることになる。何かを残すには求心力が不可欠であるが,バイデンのネックは民主党内の中道派と左派の力関係である。確かに,近来ないバラク・オバマ元大統領を遥かに超えた約7500万票という大量得票を掌中にしたが,最大の勝因は民主党予備選で党内左派のバーニー・サンダース上院議員を支持した男女を問わぬミレニアム世代の若年層が「トランプ以外であれば誰でも良い」という無党派層を選挙戦終盤で巻き込んでバイデン支持の流れを決定づけたことである。この若年層票がバイデンを勝利に押し上げたのだ…(以下は本誌掲載)申込はこちら