菅義偉首相は就任直後の9月21日にドナルド・トランプ米大統領との電話会談を皮切りに,アンゲラ・メルケル独首相(22日),ボリス・ジョンソン英首相(23日),韓国の文在寅大統領(24日),中国の習近平国家主席(25日),ウラジーミル・プーチン露大統領(29日),ジャスティン・トルドー加首相(30日),エマニュエル・マクロン仏大統領(10月5日),ジュゼッペ・コンテ伊首相(7日)と相次いで電話協議をこなした。そして首相外交デビューとなったベトナムとインドネシアを訪問(10月18~21日),ベトナムのフック首相(19日),インドネシアのジョコ大統領(20日)との首脳会談を行なった。
初外遊先,初首脳会談ということからか,さすがの菅も首都ハノイでのフックとのトップ会談では緊張感を隠せなかったことはテレビ映像から容易に分かった。それでも11月12日のジョー・バイデン米次期大統領との初めての電話会談で,対日防衛義務が明記されている日米安保条約第5条が尖閣諸島(沖縄県石垣市)への攻撃に適用されるとの発言を引き出してから自信を得たようだ。
続く15日に東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓など15カ国首脳がテレビ会議形式で開催した会議(ベトナムが議長国)で,東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名,さらに22日にはサウジアラビアが議長国のオンラインで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議では「(日本が)脱炭素社会の実現のため国際社会を主導していく」とのビデオメッセージを発信した。
こうした中で,菅の自信を表すものなのか,『読売新聞』(11月23日付朝刊)1面の「政治の現場―派閥の今」に以下のような記事が掲載された。▶︎
▶︎《11月12日昼,首相官邸。首相の菅義偉は鴨せいろをすする手をとめ,恭しく礼を述べた。自民党幹事長の二階俊博は満足そうにうなずいた。
<中略>菅は,米大統領選で勝利を確実にした前副大統領バイデンの側近と,官房長官時代に関係を深めていた話を披露し,「相手との信頼関係を大事にするのはまさに『二階外交』ですね」と持ち上げた》。
本誌が承知する限り,官房長官時代の菅がバラク・オバマ民主党政権の要職にあり「バイデンの側近」と言える人物と会っていたのはカート・キャンベル元国務次官補(東アジア太平洋担当)唯ひとりである。菅は現在もほぼ毎朝のように首相秘書官と朝食を共にする官邸裏のザ・キャピトルホテル東急の「ORIGAMI」でキャンベルと何回か会談しているのは事実である。それはブッシュ(子)共和党政権の国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長だったマイケル・グリーン戦略国際問題研究所(CSIS)副理事長も同様である。しかも,真偽は定かではないが,米ネバダ州パラダイスのウィン・リゾーツが意欲を持っていたカジノを含む統合型リゾート(IR)の横浜進出に関する協議もあったというのである(同社は8月に横浜オフィスを閉鎖)。それはともかく菅が言う「バイデンの側近」がキャンベルであるとして,同氏のアジアでの旺盛なビジネス志向に民主党執行部は眉をひそめており,バイデン新政権要職に就くことは殆どないというのだ…(以下は本誌掲載)申込はこちら