バイデン米政権の陣立てがほぼ出揃った。 予想していた以上に、民主党内プログレッシブ(急進左派)の同政権への影響力が強くなりそうである。
そう判断できる具体例を挙げたい。 閣僚級の米行政管理予算局(OMB)局長に指名されたシンクタンク「アメリカ進歩センター(CAP)」のニーラ・タンデン所長の存在である。
タンデン女史(50歳)はマサチューセッツ州出身、カリフォルニア大学(ロサンゼルス校)卒業、イェール大学で法学博士号を取得。08年大統領選の民主党予備選でヒラリー・クリントン元国務長官の選対本部政策顧問を経て11年にCAP所長。 同女史が医療保険、福祉政策、経済格差の専門家であることもあるが、問題視されるのはCAPそのものだ。
03年にクリントン政権の大統領首席補佐官を務めたジョン・ポデスタ氏が創設した進歩派の公共政策研究所である。
保守系シンクタンクのヘリテージ財団に対抗するため創設されたが、16年大統領選でヒラリー氏の選対本部長を務めたのがポデスタ氏である。つまり、タンデン女史の政治キャリアはほぼヒラリー氏と共に歩んだものと言っていい。 CAPは、シンクタンクとして保守系ヘリテージ財団やリベラル系ブルッキングス研究所のように老舗ではない。 ▶︎
▶︎それでも、公表された19年度の献金リストを見ると、年間50億円以上を集めている上に名を連ねる企業・団体が興味深い。民主党左派はこれまで一貫してアマゾン、グーグル、フェイスブック、など「GAFA」と呼ばれる巨大IT・デジタル企業への規制強化・解体を求めてきた。金額的に50万㌦以下であるが、軒並みCAPに献金している。100万㌦以上の大口献金者は、カーネギー・コーポレーション(NY)、フィデリティ基金、ハッチンズ家族基金、サンドラー財団など名門が多い。 では、なぜCAPの存在が急進左派の影響力と関係するのか。
米国では政権移行の過程で次期大統領が政府機関審査チーム(ART)を発足させて、新政権の要職候補を審査する。バイデン氏が立ち上げたARTの責任者、マサチューセッツ大学のゲーリー・ゲンスラー教授が金融規制推進者であり、米連邦準備理事会(FRB)、財務省、労働省、米通商代表部(USTR)を担当するのがCAPである。
要は、その眼鏡に適った人物が職を得るのだ。ウォール街と対立するのは明らかだ。