12月22日付「税制のプロ甘利氏が描いた国際金融都市が実現する可能性」

永田町で今、その強い存在感から注目されているのは茂木敏充外相と甘利明自民党税制調査会長の2人である。 
 12月10日に自民、公明両党が決定した令和3年度与党税制改正大綱は甘利氏の際立つリーダーシップでまとめられたものだ。 
《脱炭素社会の構築、企業のシステムの標準化や互換性を高める「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するといった菅義偉首相肝いり政策の税制支援を重視した。》(産経新聞11日付朝刊)であるが、筆者が関心を抱いたのは以下の項目であった。 同大綱「第一」の「三・法人課税(国税)の3・国際金融都市に向けた税制上の措置」である。 要は「海外投資家等特例業務届出者」(資産運用会社・高度人材など)に対し税制上の優遇措置を図るということである。 
 中国の国家安全法制下に置かれた香港の外国金融機関の大量流出が進んだことで、わが国当局はその金融機能を東京、大阪、福岡などに誘致する意図を持っているのだ。 そもそもは、香港の政情不安が緊迫化した6月、麻生太郎副総理・財務相が内々に財務省、金融庁、国際協力銀行(JBIC)に香港金融機能の日本呼び込みを進めるよう命じたことが発端だった。 
 その後、内閣官房の藤井健志官房副長官補(元国税庁長官)の下に寺岡光博内閣審議官(元財務省主計局主計官)をヘッドに事務局が発足した。▶︎

▶︎一方、自民党サイドでは党有数の税制のプロであり、デジタル化推進者でもある麻生派の甘利氏が国際金融都市構想の全体像を描いたのである。 
 在日外国人の海外資産を相続税の対象から除外するなどの恩恵を与える国際金融都市実現の推進には、首相ブレーンであるSBIホールディングスの北尾吉孝社長や竹中平蔵東洋大学教授(元金融担当相)が支援している。では、本当に国際金融都市が実現する可能性はあるのか。
 麻生氏の地元・福岡は“ご愛敬”にしても、大阪案は兵庫県神戸市と淡路島をパッケージにしたものを密かに検討しているというのだ。
 甘利氏は12月初旬に行われたフォーラム「国際金融ハブと日本の役割」で、人材誘致と税軽減を強くアピールしている。ただ、高度人材を家族ともども招致するとなれば、子供が通うインターナショナルスクールが不可欠だ。しかし、大阪に幼稚園・保育園はあるが、小学・中学校は殆どない。誘致の鍵を握るのは教育ロジスティクスである。