政府の感染症対策本部は1月7日、首都圏1都3県を対象に緊急事態宣言を再び発令した。菅義偉首相が発令を決断するまでには、水面下で東京都の小池百合子知事と菅政権との間で熾烈な攻防が繰り広げられた。 言わば「責任」の擦り合いであった。だが小池氏の「狡猾さ」が際立ち、同氏の事実上の勝利と言っていい。その政治手腕が如何なく発揮されたのは、懐かしの旧オウム真理教・上祐氏の「ああ言えばこう言う」ではないが、小池流トーク術の妙である。
政府側のカウンターパートである西村康稔経済再生相の主張に悉く反論、埼玉県の大野元裕知事、神奈川県の黒岩祐治知事、千葉県の森田健作知事を交えた2日の5者会合でも終始自らのペースに乗せて、最後は1都3県一致して緊急事態宣言再発令を要請した。
小池氏は翌3日、それまでの主張を覆して飲食店の営業時間午後10時までを同8時までに短縮する方針に替えた。 その理由は、昨年後半にコロナウイルス感染拡大に一応のストップをかけた大阪市(市長・松井一郎前大阪維新の会代表)を意識したことである。 ▶︎
▶︎大阪市と東京都の時短要請・協力金の比較が分かり易い。 大阪市:11月27日~12月15日1施設(事業所)当たり58万円、東京都:11月28日~12月17日1事業者当たり一律40万円。 1事業者というのは、傘下に5店舗保有していても40万円ポッキリだ。効果がないと見たのか、東京都は12月18日~1月11日実施分を一律100万円に上げたのだ。
その大阪市の時短は午後9時であり、しかも菅氏が首都圏の飲食店営業時間の時短強化を強く求めたことから午後8時を打ち出したのである。 では、小池氏の目指す政治目標は何なのか。いま同氏の頭の中は、恐らく7月2日告示・11日投開票の東京都議選のことで一杯であろう。 都議会与党の「都民ファーストの会」から2人がすでに離脱している。何としてもコロナ対策で「成果」を上げて同会の議席減に歯止めをかけたいのである。
そしてさらに、東京五輪を「無観客」であっても開催し、そのホストを務めたという「勲章」を掌中に収めたいのだ。 その後、「やれることは全てやり遂げた」として辞任表明する。次は国政復帰(衆院東京10区)である。当選確実な小池氏は自民党二階派に入り、究極の野心を目指す。果たして「見果てぬ夢」となるのか、見極めたい。