No.624 1月25日号 今秋に「河野選挙管理内閣」誕生か

 1月18日に召集された第204回通常国会における菅義偉首相の施政方針演説は,政府関係者の言葉を借りるならば「ふにゃらふにゃら」であり,国民に語りかける菅独自のメッセージが何もなかった――。
 菅に強い自負があることは認めるが,総花的過ぎて菅色が感じられない無味乾燥な首相演説だった。良くも悪くも「アリの目線」の政治家であり,全て自分が判断するためなのか,気負い過ぎるのだ。官房長官時代を思えば皮肉なことだが,情報過疎に置かれていることもある。
 辛辣に言えば,そもそも菅には演説を通じて国民に語りかけるという発想がないのではないか。首相答弁でもそれは分かる。20日の衆院本会議の代表質問。自民党の二階俊博幹事長がわざわざ「地方の皆さんに対する哲学を語っていただきたい」と誘導したが,何ら答えなかった。嘘でも良いとは言わないが,せめて秋田県から上京・苦学して遅咲きながら国政政治家となり,今日ここまで登り詰めたという「サクセスストーリー」を語り,コロナ禍の中で入試・就活など将来に不安を覚える若い世代を元気づける答弁が出来たはずだ。
 繰り返すが,菅は「言葉力」が欠如している。それでも敢えて指摘すれば,施政方針演説の「(六)外交・安全保障」で「日米同盟,経済安全保障」に続く「近隣外交」いの一番に北朝鮮との国交正常化を目指すと述べたことである。次いで日中関係,日露関係,ASEAN(東南アジア諸国連合),日韓関係という順番で言及した。▶︎

▶︎一方,同日の茂木敏充外相の「外交演説」では「近隣諸国との外交」について対中→対韓→対露→対北朝鮮→対中東の順番だった。菅の胸中には東京五輪開催を日朝国交正常化・拉致問題交渉の恰好の機会にするとの秘策があるのかもしれない。いずれにしても金正恩労働党総書記に対するシグナルになった。
 そうであるとしても,菅にとって『読売新聞』世論調査(1月15~17日実施)の内閣支持率39%(前回比6P減),不支持率49%(同6P増)は衝撃的な数字であったことは間違いない。新型コロナウイルスの変異種発生もあり感染急拡大に「無策」との批判の集中砲火を浴び,心中穏やかであるはずがない。そこへ昨年7月参院選を巡る買収事件で公職選挙法違反に問われた河井案里被告(参院議員)に対し,東京地裁が21日に有罪判決を言い渡したのだ。
 月内の河井の議員辞職は不可避となり,4月25日の衆参院補欠選挙は衆院北海道2区,参院長野選挙区と同広島選挙区になる。衆参院補選は自民党の2戦2敗・1不戦敗が確実である。追い打ちをかけるように,英紙タイムズ(21日付電子版)が「日本政府は内々に今夏の東京五輪を中止せざるを得ないと結論付けた」と報じた。
 このように菅政権には今,政権浮揚に繋がる好材料が何もない。では,今後の政局展開はどのようなものになるのか…<中略>…
そのためには「劇薬」でも何でも飲み込むのが融通無碍の自民党である。事実上の「河野選挙管理内閣」だ。首相の座に固執しない菅はその点でフレキシビリティを持っている…(以下は本誌掲載)申込はこちら