2月1日付 「菅首相は大将として司令部に留まることも必要ー走り出したら兵士は追走する以外にない」

「菅さんは軍刀を手に塹壕から這い出て匍匐前進して敵陣に斬り込む部隊長のようだ」――。政権を立ち上げて4カ月余の菅義偉首相を、こう表現するのは友人のマスコミ幹部だ。言い得て妙である。だが、読者には少々の説明が必要だろう。 旧日本陸軍は概ね次のような編成だった。
 軍司令官(大将)の下に、師団長(中将)、旅団長(少将)、連隊長(大佐)、大隊長(中佐乃至少佐)、中隊長(大尉)など。 ここで言う「部隊長」というのは中隊長・大尉クラスを指す。玉砕覚悟で自らが先頭に立ち4個小隊約200人の兵士を鼓舞し、敵の重機銃を浴びながらの突撃である。要は、菅首相はせめて2個連隊と3個大隊を指揮する旅団長・少将であって欲しいということである。尉官ではなく将官であるべきだ、と。
 菅首相は最近、新型コロナウイルス感染の急拡大による緊急事態宣言発令もあり、都心のホテルでの朝食会合を自粛している。 産経新聞に掲載される「菅日誌」には、前日の菅首相の日程が記述される(希に隠すこともある)。一時期、毎朝のように「永田町のザ・キャピトルホテル東急のオリガミで首相秘書官と朝食」と書かれていた。 官邸関係者は、この「秘書官との朝食」は殆どが事実ではなく、菅首相が人選した学者、エコノミストなどとの「パワー・ブレックファースト」(助言や情報を得るための朝食を指すワシントン政界用語)だ、と正直に言う。 まさにそれが「菅流」である。▶︎

▶︎自分が相手を選ぶだけでなく、場合によっては自らアポイントも取るのだ。良い悪いは別にして菅氏が全てを決める。問題は、政策の優先順位から国会日程までほぼ自分が決定することである。上手く回れば、政権発足当初の携帯電話料金の引き下げや不妊治療の保険適用問題でのスピード感ある決断となる。問題は、秘書官を含め首相周りとの擦り合わせが十分でないまま官邸や政府方針をトップダウンで下した場合である。 
 部隊長が突撃の掛け声とともに走り出したら、兵士は追走する以外にない。敵の大反撃に遭遇すれば被害は甚大なものとなる。時と場合によっては塹壕で頭を低くして待つことも必要だ。 支持率急落の引き金となった「ステーキ店での夜の会食」も止めるべきと直言する従卒がいなかったからだ。当分間、泰然として旅団司令部に留まることをお勧めする。