3月15日,アントニー・ブリンケン米国務長官はロイド・オースティン米国防長官と共に日本,韓国,オーストラリア(インド)3カ国歴訪最初の訪問国として来日する。両氏は東京滞在中の16日,東京・麻布台の外務省飯倉公館で茂木敏充外相,岸信夫防衛相と外務・防衛担当閣僚協議(日米2プラス2)を開催する。
ブリンケンは3日午前(米東部時間),ホワイトハウスがバイデン政権の外交,軍事,経済政策の基本方針となる「国家安全保障戦略」策定に向けた指針を公表するのに合わせて,国務省で外交演説を行った。日本での報道ではバイデン安全保障戦略指針の最重要点が「中国,唯一の競争相手」(『日本経済新聞』4日付夕刊や『読売新聞』5日付朝刊の見出し)であり,中国を最大の「標的」としたものであるとの印象を与えた。
確かに,ブリンケン演説で同国との関係について「競争的であるべきだ。可能であれば協力的になるが,必要であれば敵対的にもなる」と述べた。だがこの指針を注意深く読むと,同盟国連携を「自国防衛」強化の一環として位置付けていることにむしろ力点があることが分かる。事実,原文で「share responsibilities」,「share burdens」という言葉が随所に盛り込まれており,日本など同盟国に対し「責任の共有」,そして「負担の共有」を強く求めているのだ。
その意味では,むしろ『日本経済新聞』(5日付朝刊)が1面トップで報じた記事「米軍が対中ミサイル網―アジアに,6年で2.9兆円要望」にあるように,中国を射程に入れるミサイル兵器を保有していない在日米軍配備に「思いやり予算」(在日米軍駐留経費)とは別に財政的負担を求める可能性があるのだ。と同時に,国家安全保障戦略指針の中に「自由で開かれた太平洋」(Free and Open Indo – Pacific)というワーディングが全く無かったことも気になる。▶︎
▶︎2月18日に行われた日米豪印(クアッド)外相電話会談で米国のコミットメントは確認されたものの,安倍晋三首相(当時)が2016年8月にケニアで発表した「自由で開かれたインド太平洋戦略」は,その後に誕生したトランプ政権下での安倍・トランプ蜜月時代の標記であるとして忌避されたのかもしれない。それはともかく,ブリンケンの早期来日実現に向けて米側で汗をかいたソン・キム国務次官補(東アジア・太平洋担当)代行の存在が大きかった。駐韓大使を経て現駐インドネシア大使のキムは,ジョー・バイデン大統領が国務次官補に指名したエドガード・ケーガン元駐インド副大使の米議会上院での人事承認が遅れていることから,急遽 “助っ人”として5週間その任にある。
同氏は,73年8月の金大中事件(金大中元大統領が東京・九段下のグランドパレスホテルから旧KCIAによって拉致された)当時の在京責任者とされた金在権駐日公使の息子である(同氏は73年に家族共々米国に移住,94年に肺がんで死亡した)。
ブリンケンは15日,菅義偉首相を表敬してバイデン大統領親書を手渡すがそこに菅首相の早期訪米要請が認められている。官邸と外務省は現在、4月29日からの大型連休前の訪米・日米首脳会談を調整している…(以下は本誌掲載)申込はこちら