ベトナムと言えば、世界有数の親日国として知られる。 何度か訪れた経験もあり、同国に文化的親和性があり、日本及び日本人に高い信頼を抱いていることも承知している。
人口約9700万人、平均年齢32.5歳、国内総生産(GDP)3406億㌦(約37兆円)、1人当たりGDP3498㌦(約38万円)、実質GDP成長率2.91%――。東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の優等生である。 昨年9月の政権発足後、菅義偉首相が最初に訪れたのはベトナムとインドネシアである(10月18~21日)。
日越外交関係樹立45周年の2018年5月には当時のクアン国家主席が国賓として来日、その後もフック首相(現国家主席)が19年6月の20カ国・地域(G20)大阪サミット、同10月の即位の礼出席で来日している。それ以前で言えば、安倍晋三前首相は公式訪問で2回、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議出席で訪越、さらに17年2月には当時の天皇皇后両陛下が公式訪問されている。 日越交流は政治、経済、文化面で加速的に進み、日本はベトナムにとり第2位の投資国であり、第4位の貿易相手国である。さてここで、現在の同国の政治情勢である。▶︎
▶︎過日夜、ベトナム問題の最高権威である早稲田大学の坪井善明名誉教授と酒食を交えた懇談の機会があった。 3月下旬~4月上旬に開催された第14期国会第11会期で決定された主要人事について聞いた。 先ず坪井氏が強調したのは、新首相に選出されたファム・ミン・チン前共産党中央組織委員長による閣僚人事の持つ意味だった。
そもそも同国では北部・中部・南部という地域差を尊重して、序列第1位の共産党書記長は首都ハノイがある北部出身者、国家主席もしくは首相は中部、首相もしくは国家主席は南部という暗黙の約束があったという。 事実、5名の副首相と22名の閣僚をみると、北部出身者14名、中部出身者7名、南部出身者6名、平均年齢は56歳と、バランスが取れている。 際立つチン氏人事は2つあるという。
①かつてチョン書記長と同職を激しく争ったズン元首相長男のギ建設副大臣を建設相に抜擢、②チン氏故郷の北中部タインホア省隣接省から11名を閣僚に任命など、早期の権力奪取の布石と見て取れる。この「多種多面の要素を熟慮した人事」は近い将来の“中国離れ”の予兆と言えるかもしれない。親中とされるチョン氏後継を見据えているのだ。