本誌はこの間,4月16日午後(米国東部時間)に行われた日米首脳会談直前の日米実務レベルによる共同声明草案を巡る調整段階,首脳会談後の日米両国における反応・評価について取材を重ねてきた。と同時に,菅義偉首相とジョー・バイデン大統領のテタテ会談(通訳のみ参加の約20分間),その後の少人数会合と全体会合の約2時間10分超で話し合われたテーマについての深掘り取材も試みた。
こうしたことを踏まえて菅・バイデン会談から10日が経った今,本誌が得ているその一端を報告したい。先ずは『日本経済新聞』(4月19日付朝刊)が「米側で主に調整を担ったのは米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるキャンベル氏で事前に来日した」,続く23日付朝刊では「首脳会談の直前に来日し,台湾問題で日本側により踏み込んだ対応を迫っていた」と報じた。
クリントン政権の国防副次官補(アジア・太平洋担当),オバマ政権の国務次官補(東アジア・太平洋担当)を務めたカート・キャンベルはわが国の外交・安全保障政策セクターに知己が多く,親日派とされる。それだけではない。ワシントンDCベルトウェイ内(日本で言えば永田町・霞が関)での「Asia Czar(Tsar)=アジア皇帝」を自任しているという。そのキャンベルが極秘裏に事前来日していたのは事実である。▶︎
▶︎4月7日に来日し,2日間の東京滞在中に茂木敏充外相,秋葉剛男外務事務次官,森健良外務審議官(政務),そして北村滋国家安全保障局長,安全保障専門の学者とも会っている。秋葉とは同日夜,駐日米大使公邸で長時間協議を行った説がある。
キャンベルが宿泊した東京・虎の門のThe Okura Tokyoから目の前にある大使館への移動にも業者搬入口に専用車を呼び寄せるなど隠密行動だったという。そうした子細は別にしても,ここで指摘すべきは同氏との協議で「台湾問題」が協議テーマにならなかったという事実である。確かに,共同声明には「日米両国は,台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに,両岸問題の平和的解決を促す」と書き込まれている。
だが,「台湾海峡の平和と安定の重要性」については,既にアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が来日して3月16日に開催された茂木外相,岸信夫防衛相との日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の共同文書で記されていたのだ。では,一体何がキャンベルとの間で話し合われたのか。正直,現時点で解はない。しかし,取材の中で得たヒントがある。近い将来の日米連携による対中制裁の具体策についての擦り合わせであったようだ…(以下は本誌掲載)申込はこちら