米国ワシントンのベルトウェイ内(日本の永田町・霞が関)でもバイデン政権の対中政策を不安視する向きが少なくないことは周知の事実である。 ジョー・バイデン大統領自身の発言が度々揺らぐからだ。
一例を挙げる。4月28日午後9時(米国東部時間・日本時間29日午前10時)、米連邦議会上下両院合同本会議で行った施政方針演説がその典型である。 バイデン氏は演説で「習(近平)国家主席とは一緒に一万七千㍄も渡航し、24時間以上もプライベートに協議を重ねてきた」と述べた。 ところがホワイトハウスが発表した演説文のどこを探しても、その件は無い。当たり前だ。真っ赤な嘘であるからだ。スピーチライターが準備した演説草案にも載っていなかった。
どういう事なのか。バイデン氏は副大統領時代に当時副主席だった習氏と会談しており、その性格を含めてよく知っていると言いたいがためにアドリブで言い放ってしまったというのが真相だ。 施政方針演説後、「親バイデン」論調のCNNテレビが中国に関する大統領発言に間違いがあると指摘したほどだ。▶︎
▶︎一方、保守系FOXニュースは中国批判が少なく、懸念されていた対中融和色を払拭できなかったことから、真っ先に嚙みついた。ホームページに「Tough on China?」と、バイデン政権の対中強硬姿勢を疑問視する見出しを掲げた記事を投稿したのだ。
同演説にもあったがバイデン氏はしきりに「民主主義vs.専制主義」の構図を説き、中国など専制主義国家に対して、米国を中心とする民主主義国家が打ち勝つと唱える。 だが冷戦期とは異なりイデオロギーの「地政学」だけでなく、半導体問題を見るまでもなく、台湾は米国にとって「地経学」的にもアキレス腱となった。台湾と中国、そして中国に寄り添う韓国に半導体の技術と生産力が集中している現実がある限り、米国のリスクは軽減されない。
伝統的な外交・軍事政策に加えて、米政権と議会が同じ方向に向くのが経済安全保障の観点から見た半導体産業の後押しとなる。 その意味では、4月8日に米上院外交委員会が超党派で議会に提出した「戦略的競争法案」の1日も早い成立が期待される。中国の軍事・経済的挑戦に対処するべくインド太平洋地域及び世界の同盟国に米国のコミットメントを再確認すると記述されている。 バイデン氏は議会の支援を得て中国と真っ向勝負ができるはずだ。