最近,霞が関官僚群から首相官邸関係者に「菅(義偉)総理はちょっと横暴に過ぎるのではないか」との声が頻繁に届くようになった。新型コロナウイルスのワクチン接種体制の再構築を官邸主導で目指す菅首相の“ゴリ押し”が際立っているのは事実である。奇しくも読売新聞(5月24日付朝刊)が1面左肩で連載コラム「政治の現場・ワクチン(1)」をスタートしたが,大きな横見出し「首相『何言われても,突き進む』―『接種完了』一点突破」を掲げた記事には次のような件があった。《接種が本格化する6月に必ず雰囲気が変わる――。
「何を言われようが,ワクチンだけで突き進む」……さらに菅は,5月7日,ワクチン接種の「1日100万回」目標を打ち出した。<中略>これにも河野(太郎ワクチン相)は抵抗した。具体的な裏付けもなく掲げて,達成できなければ,非難を浴びるのは確実だった。……発表直前,数字を知った河野は,菅と直接向き合い翻意を迫った。……「オレがやると言えば,みんな動く」と強く信じる菅は納得しなかった。》まさにワクチン接種に関する現状を知らしめる秀逸の記事である。
本誌編集長は4月16日の日米首脳会談直後のウェブマガジン連載コラム(同24日付)に「懸念すべきは,為せば成るとばかりに菅氏が自ら決断すれば外交でも成果が得られるのだと,自信過剰になってしまうことである。
国家指導者が揺るぎない自信を持って事に臨むことは好ましい。それは否定しない。だが,外交・安全保障政策についての知見と経験が必ずしも十分であると言い難い菅氏に勘違いだけはして欲しくない。常に謙虚であって欲しいのだ」と書いている。
まさに『読売』の指摘にあるように,菅は《「7月完了」「1日100万回」も,霞が関では「こっちが根拠を教えてもらいたい」(厚労省官僚)と声が漏れるほど評価は低い。だが,そんな批判は一向に意に介さない。》ほど自信過剰になってしまったようだ。そして《目標を定め,一点突破を図る手法は菅の真骨頂だ。》と報じられたように,首相はまた東京五輪・パラリンピック開催についても「やるしかない」と決め打ちしているのだ。
親しい人物にもこの言葉を多用しているが,この点については,実は小池百合子東京都知事と一致している。3度目の緊急事態宣言を10都府県に拡大した菅と決定的に異なるのは,小池がロックダウン(都市封鎖)という強い措置を求めているのに対し菅は飽くまでも経済活動との合わせ技を志向していることである…(以下は本誌掲載)申込はこちら