6月15日付「台湾の防衛は日本の防衛」前米大統領副補佐官が注目発言 南シナ海の攻防で米軍が中国に“惨敗”の衝撃シミュレーション

トランプ政権当時のマシュー・ポッティンジャー前大統領副補佐官(国家安全保障担当)が極めて興味深い発言を行った。 ポッティンジャー氏は6月1日、リチャード・ニクソン元大統領の出身地であるロサンゼルス郊外のオレンジ郡ヨーバリンダにあるニクソン大統領図書館・博物館主催のセミナーで、「自衛隊には『台湾の防衛は日本の防衛』という格言があり、日本はそれに応じて行動すると思う」と語った。
 昨年5月、同氏の名を在ワシントン外交団に知らしめた事があった。 米バージニア大学において中国語で講演、中国の「五・四運動」(1919年5月4日に北京で発生した反日街頭運動)に触れる中で、当時の知識人・魯迅や胡適らが中国の伝統的文化と西洋思想の融合を訴えて政府に基本的人権を尊重させ、専制と戦争防止を強く求めたことを想起すべきだ、とアピールしたのだ。 同氏講演の肝は2つあった。1つは香港民主化勢力に対する全面的な支持。2つ目が台湾断固防衛であった。
 英ロイター通信と米紙ウォール・ストリート・ジャーナル記者を経て海兵隊に入隊、イラク、アフガン戦争に情報将校として従軍(青銅星賞授与で少佐に昇進)した文武両道に通じる政策テクノクラートである。 従ってワシントン政界では民主、共和党支持を問わず、同氏への評価は極めて高い。 

バイデン政権の外交・安保政策のキーマンであるアントニー・ブリンケン国務長官は、実はそのポッティンジャー氏と元上司のH・R・マクマスター元大統領補佐官(現フーバー研究所シニア・フェロー)が連名で発表した対中戦略を“教科書”にしているほどだ。ポッティンジャー氏は昨年の講演で「今日の台湾がまさに『5・4精神』の生きた証人である」と語っていたのである。 
 では、ポッティンジャー氏が抱く危機感とは何なのか。習近平指導部の「完全統一」戦略(2050年までの台湾統一と香港・マカオの統合)に揺らぎは微塵もないと判断しているのだ。 南シナ海における米中軍事力の差は大きく、机上軍事シミュレーションでは米インド太平洋軍が台湾攻防で惨敗する。その阻止には①第1列島線内での中国の制空・制海権を認めない②台湾を含む同線に位置する国・地域を防衛する―以外の選択肢はない。ポッティンジャー氏が1日に語った「クアッド(日米豪印)連携が日本の生命線」は理に適っている。