8月2日付 「苦痛を感じない?GAFAなどへのデジタル課税導入ーすでに最低税率『15%以上』と同等負担」

少々前のことであるが、極めて重要な案件について取り上げたい。7月10日、イタリア・ベネチアで開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は共同声明を発表した。中でも最大の注目点は、「GAFA」と呼ばれる巨大IT(情報技術)企業を念頭に置いたデジタル課税の導入で大筋合意をみたことである。具体的には、課税対象を全世界売上が200億ユーロ(約2.6兆円)超かつ利益率10%超の多国籍企業としたことだ。二つ目は、国際的に法人税の最低税率(実行税率ベース)を15%以上とし、対象所得から有形資産(簿価)と支払給与の5%以上を除外することで合意した点である。経済協力開発機構(OECD)の交渉に参加した139カ国・地域のうち、低税率国で知られるアイルランド(12.5%)など8カ国は合意に加わっていない。
 では、デジタル課税権の配分はどうなるのか。先の条件を満たすのは超大規模・超高利益水準のグローバル企業100社程度である。その象徴が、「GAFA」と称される米グーグル(G)、アップル(A)、フェイスブック(F)、アマゾン・ドット・コム(A)なのだ。 GAFA4社の税負担率は15.4%で25.1%の世界平均より9.7㌽低い(日本経済新聞調査)。OECD加盟国平均の法人税率も23%台(20年)である。 ▶︎

▶︎これまで問題視されたのは、こうした多国籍企業がその所在地国からビジネスを市場国へ提供するものの、当該市場国の税務当局は売上に対して課税できないことにある。新たな課税権の配分とは、即ちグローバル企業の物理的拠点の有無によらず、売上等に応じて徴収する税金を市場国間で配分するという意味なのだ。
 では、今回の国際的法人課税ルールの合意は喜ぶべき事なのか。巨大な多国籍企業グループが最低限の法人税負担をすることを確保するために導入が決まった「所得合算ルール」を検証する。①軽課税国にある子会社へ帰属する所得を最低税率まで親会社の所在国で課税する②軽課税国への支払を行っている子会社に対し、支払会社の国で課税する―というのだ。
 しかし、「最低税率」と「対象となる支払先の国で適用される税率」の差額に課税するという合意に疑問が残る。なぜならばGAFAの税負担率はすでに「15%以上」とほぼ同じ15.4%であるからだ。デジタル課税は痛痒を感じないのではないか。