8月16日付「FRB『パウエル再任』に代替シナリオー無視できない民主党内『左派』の政治力」

ジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は来年2月に任期満了となる。 米国の金融市場は同議長の金融政策運営を高く評価、「パウエル再任」を織り込み済みである。 
 とはいえワシントンの政界関係者は、超緩和政策の顔であるパウエル氏再任をメインシナリオとするが、断じるには無視できない政治的要因がある、と筆者にクギを指す。 代替シナリオがあるというのである。
それは与党・民主党内の「左派」ファクターと関係する。 そもそもパウエル氏は規制緩和論者の共和党員であり、トランプ前政権が指名、議長に就任した。そしてジャネット・イエレン前議長(民主党員)はバイデン政権発足で財務長官に転じて、ウォール街の規制強化策を相次いで打ち出した。FRB議長は上院承認人事である。パウエル氏の就任時に、民主党左派のエリザベス・ウォーレン上院議員らは反対票を投じているのだ。 
 つまり、パウエル議長再任のためには、経済格差問題から気候変動問題など主要政策でそれなりの「リベラル色」を明らかにしなければならない。加えて、バイデン政権はすでに金融政策の舵取りを緩和から引き締めに軌道修正することを示唆している。 そして金融規制と消費者金融保護に関して、現理事会執行部のスタンスを変更する意向である。  ▶︎

▶︎そこで代替シナリオとして登場したのが、ラエル・ブレイナードFRB理事(オバマ政権の国際担当次官)の昇格案である。同女史は7月30日、アスペン経済戦略グループでの講演で、金融リスクに対する規制手段の利用に前向きな姿勢を打ち出し、パウエル氏との違いを明確にした。
  そうは言っても、ジョー・バイデン大統領自身は金融政策の面でパウエル・イニシアチブを高く評価している。 付言すれば、パウエル議長がオーバーシュートコミットメント(物価安定を目指して物価上昇率が目標値を行き過ぎるまで金融緩和継続を公約する)の導入者としての実績と信認を議会や市場で獲得しているのだ。 最も重要なポイントは、実は規制強化論者であるイエレン氏がパウエル氏を支持していることである。同氏に強い敬意を持っており、再任されるべきだと考えているという。 
 最後に一つ。10月に任期が切れるランダル・クオールズ副議長(銀行監督担当)が退任すれば、ブレイナード氏が昇格する。なぜならば、民主党左派の「敵」であるからだ。米中央銀行トップ人事はまさに政治そのものである。