8月23日付「来年秋の中間選挙、バイデン氏を待つ厳しい審判ーアフガン撤兵リベラル系メディアも批判」

イスラム原理主義勢力タリバンが、再びアフガニスタンの支配者となる。地政学上、ユーラシア大陸の「ヘソ」に当たるアフガンはアジアから欧州、北極海からインド太平洋につながる東西・南北の軍事的要衝にある。「9・11同時多発テロ」などを引き起こした過激派組織アルカーイダの首謀者で、後に米軍に殺害されたウサマ・ビンラーディンを匿っていたのが旧タリバン政権だった。 首都カブールの陥落直後、タリバンの広報担当が会見で平和裏に新政権を樹立し、国際ルールを遵守すると言い募ったが、国際社会は信じていない。
 ジョー・バイデン米大統領は16日午後(米東部時間)の全米向け演説で、「米軍撤退は正しい判断だった」「ガニ政権の崩壊は想像外の速さだった」と、言い訳に終始した。米国内のバイデン批判がヒートアップしている。この批判は従来とは明らかに異なり、民主党政権に好意的な報道で知られるリベラル系メディアに多く見られる特色だ。 CNNのウェブサイトの見出しは以下の通り。Biden′s mismanagement underscores 20years of failed policy by US and its allies(バイデンの間違った判断が20年に及んだ米欧のアフガン政策の失敗を強調した)。▶︎

▶︎ワシントン・ポスト紙もHow wrong the Biden administration was about Afghanistan(バイデン政権のアフガン政策の大間違い)との見出しを掲げた。そもそもバイデン氏は演説の中で、当初は「我々はありとあらゆる不測の事態に備えて計画を立てた」と述べたが、その直後に「正直、(タリバンのカブール制圧は)想定していた以上に速い展開となった」と、矛盾する説明を行っている。世界中が危惧するタリバン政権下の女性や子供への人権蹂躙・暴行弾圧に関しては、実にノー天気なことを語っている。「アフガン市民の基本的人権について引き続き発言を行い、世界中に発信していく」――。 
 タリバンが対話を通じてこれまでの人権無視の抑圧政策を改めると思っている人など皆無である。 対話で説得できるのであれば、そもそもテロなど起きなかった。余りにも他人事のように聞こえた19分間の演説だった。「人権問題」を表看板にするバイデン氏は、質疑を受けず立ち去った。カブール陥落当日の飛行場のテレビ映像を見た誰もが75年4月30日の「サイゴン陥落」を想起したはずだ。来年秋の中間選挙でアフガン問題が争点になる。そしてバイデン氏は厳しい審判を受けるはずだ。