No.639 9月25日号 「写真判定」になる自民党総裁選

自民党総裁選は最終盤になって大混戦となっている――。
 9月17日にスタートの号砲が鳴った時点で勢いよく飛び出した河野太郎規制改革相が終始トップを走り,逃げ切れると思われていた。ところが終盤の第4コーナーに入るや追走する岸田文雄前政調会長の激しい追い込みと,出遅れ感が否めなかった高市早苗前総務相が最後の直線で予想外の瞬発力がある脚質を発揮し追い込みをかけてきたことから,岸田が差し切る可能性すら出て来て勝負は写真判定に持ち込まれそうな状況にある。平たく言えば,第1回投票では決着が付かずに決戦投票になる可能性が極めて高いということだ。
 確かに直近のメディア2社の世論調査を見ると,『毎日新聞』・社会調査研究センター合同のインターネット調査(25日実施)では河野支持45%,岸田支持18%,高市支持18%,『日本経済新聞』・テレビ東京合同調査(23~25日)は河野氏支持46%,岸田支持17%,高市支持14%であり,依然として圧倒的な河野支持である(野田聖子幹事長代行は圏外のため記載しない)。問題は,世論調査の結果が自民党員・党友の投票行動にどれだけ反映しているのか,そして残余期日が少ない今後の投票行動にどれだけ影響を与えるのか,である。ここで頭の体操をする。▶︎

▶︎第1回投票は,①河野→岸田→高市の順位(以下同じ)②河野→高市→岸田③岸田→河野→高市④岸田→高市→河野⑤高市→河野→岸田⑥高市→岸田→河野――のシナリオ中のどれかということになる。
 先ず「河野総裁・首相」には①か②のいずれかで過半数を制する必要がある。でなければ,2位が岸田,高市のいずれであっても2,3位連合によって国会議員票が決め手となる決選投票で敗れるからだ。次は「岸田総裁・首相」のケースである。終盤になってから高市が安倍晋三前首相の全面的なテコ入れで議員票相当数獲得の勢いであることに危機感を抱いた岸田陣営は引き締めに傾注している。具体的には党員・党友票の約30%とされる職域団体票獲得に注力し,手元の党員名簿を基に戸別訪問オルグを行っているほどだ。
 ③と④のいずれかの場合に,それが叶う。党員・党友における認知度が3人のなかで一番低い高市が総裁・首相になる可能性はゼロとは言わないが,現状では難しい。それでも「高市総裁」であれば,岸田は幹事長という人事見立てが密やかに囁か始めているほど高市は今や無視できない存在になりつつある…(以下は本誌掲載)申込はこちら