No.640 10月10日号 かなり強かな岸田文雄首相

 財務省の矢野康治事務次官が『文藝春秋』(11月号)に寄稿した「財務次官,モノ申す―このままでは国家財政は破綻する」が岸田官邸内で問題視されている。矢野の持論「公僕は心あるモノ言う犬であらねばならない」は同氏の知己の間で周知の事実であり,正論を吐く気概を感じる財務官僚である事を否定する関係者は皆無に等しい。
 ただ,岸田文雄首相が自民党総裁選時から繰り返し「数十兆円規模の大型経済対策の実施」をアピールしてきた経緯がある中で,財政当局責任者に「このバラマキ・リスクがどんどん高まっている状況を前にして,『これは本当に危険だ』と憂いを禁じ得ません」「本当に巨額な経済対策が必要なのか。その経済対策は本当に有効なのか。そのコストや弊害も含めて,よく吟味する必要があります」と断じられて,官邸サイドが平気でいられるはずがない。矢野に対し辞任圧力が強まっているとの声が先週末に聞こえてきた。
 外国投資家の日本株3週連続売り越しに気を揉む官邸側から懸念無用と「矢野辞表提出→岸田受理」のシグナルを株式市場向けに週明けの11日にも発するのではないかとの観測も浮上する。では,岸田自身,そして首相周りはそれほど「狭量」な見方に取り憑かれているのか。答えは否である。▶︎

▶︎まさに『文春』発売日の8日に行われた第205回臨時国会の首相所信表明演説で,岸田は「危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い,万全を期します。経済あっての財政であり,順番を間違えてはなりません。経済をしっかり立て直します。そして,財政健全化に向けて取り組みます」と述べている。
 加えて,岸田はこれまで言明していた「金融所得課税」を所信表明では封印,言及しなかった。経済や市場へのネガティブな影響を勘案したのだ。所信表明で2回も繰り返した「成長と分配の好循環」というスローガンとは別に,岸田官邸は外国投資家を念頭に「成長なくして分配なし」というリアリズムに徹する腹積もりである。その意味でも,矢野が“爆死”することはないと,本誌は判断している。ここで言及すべきは首相を支える「チーム岸田」である。そもそも岸田派(宏池会・47人)は若手の人材に恵まれている。
 取り分け,細田派(清和会),麻生派(志公会)に次いで11人いる衆院当選3回生の中で実年齢も若い有望な4人の古賀篤厚生労働副大臣(49歳),岩田和親経済産業大臣政務官(48歳),村井英樹首相補佐官(41歳),小林史明デジタル副大臣(38歳)が今人事で処遇された。辻清人元外務大臣政務官(42歳),そして堀内詔子ワクチン・五輪相(55歳)も3回生だ。彼らを束ねているのは岸田最側近の木原誠二官房副長官(政務)兼首相補佐官(衆院4回・51歳)である…(以下は本誌掲載)申込はこちら