自民党が予測を遥かに超えた絶対安定多数(261議席)を獲得した第49回衆院選投開票日(10月31日)後に読んだ新聞記事のなかで印象に残った記事が2つあった。先ず『日本経済新聞』(11月5日付朝刊)4面の政治・外交欄に掲載された来年7月の参院選で各党が得る議席数を試算した記事だ。「参院選1人区自民28勝4敗か―衆院選票数で予測した場合,与党で過半数維持の試算」の見出しを掲げて,リードで《自民党は32の1人区で28勝4敗,比例代表は2019年の前回と同じ19議席だった。非改選を含めた公明党との合計は125以上となり,定数248の過半数を見込む》と書いている。さらに記事中には《参院選の選挙区(註・改選定数が2以上の複数区は13)と比例代表の試算議席を足すと,自民は改選124の過半数を単独で獲得する計算になる。現行制度で最多を記録した13年の65議席を上回る可能性もある》との予測が記述されていた。何の事はない。来夏参院選でも自民単独過半数があり得るというのだ。
次に『朝日新聞』(同7日付朝刊)3面の連載コラム「日曜に想う」である。熱心な読者を多く持つ編集委員・曽我豪の「疑似政権交代と二大政党制の闘い」である。《疑惑や失政で政権が行き詰ると,昭和の自民党はいつも同じ手を使った。別の政策の旗と首相候補の顔を持つ派閥が政権をつくり,世論の逆風をかわそうとした。今回,令和最初の衆院選に向けて政権交代の危機が迫るなか,昭和の成功体験にならう作為があったのだろう》とみる曽我は,9月の自民総裁選で岸田文雄現首相を圧勝させたのは派閥の力だったと断じた。▶︎
▶︎その上で衆院選絶対安定多数獲得はたとえ「疑似」であれ「交代」であり,《再び自民党の危機を救ったかに見える。だが,釈然としない》とも指摘する。その釈然とはやや違う意味で本誌が「釈然としなかった」ことに言及したい。自民党が単独過半数(233議席)獲得の攻防になっていた選挙中盤・終盤における大手メディアの情勢調査・予測議席に関する報道である。政権に批判的な論調で知られる『朝日新聞』の情勢調査(10月23~24日実施)では①自民は公示前の276議席より減るものの,単独過半数を大きく上回る②立憲民主は比例区に勢いがなく,公示前の109議席からほぼ横ばい――というものだった。正直,驚いた。その直後の『読売新聞』(26~28日)は自民単独過半数微妙,小選挙区289のうち自民候補優勢が113に留まり,劣勢60,当落線上104――であった。
そして共同通信(23~26日)では与党は絶対安定多数を視野に入れ,立民は伸び悩んでいる,と伝えた。『日経新聞』(26~28日)も『読売』予測と酷似しており,自民231議席(選挙区164・比例67),立民136議席(85+51)というものだった。相反した予測の「朝日・共同」対「読売・日経」の戦いは前者が勝利した。だが,投開票日夕方時点でも「自民単独過半数割れ」情報が駆け巡っていたことから,いかに議席予測が難しいかが分かる…(以下は本誌掲載)申込はこちら