11月19日午前、首相官邸で経済安全保障推進会議(議長・岸田文雄首相)の初会合が開かれた。 岸田政権は来年1月召集の第208回通常国会に、経済安全保障推進法案(仮称)を提出する。同法案は、次の4項目を柱とするものとなる。
①重要物資の国内の製造基盤強化に向けた制度新設によるサプライチェーンの強靭化支援②機微技術を巡る特許出願の非公開化の措置③重要な先端技術の研究開発について資金支援と、政府が開発に有用な情報を提供可能とする枠組み新設④インフラ機能の維持などに係わる安全性・信頼性を確保するため、基幹インフラ事業者による重要な設備導入を事前審査する制度新設――。
日本国内外の社会経済構造の変化、国際情勢の複雑化などから、経済と安全保障を一体のものとした対策が急務との認識から法制化を目指す。 法整備の実務を担うのは、この日、内閣官房に設置された「経済安全保障法制準備室」(室長=藤井敏彦内閣審議官・前国家安全保障局経済班長)であり、財務、外務、経済産業、防衛省など関係省庁の職員約50人で構成される。
③の具体例は、半導体受託生産で世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)とソニーグループの、22年に熊本県菊陽町に新工場建設の総額8000億円共同プロジェクトである。その半分である巨額補助金は先に閣議決定された21年度補正予算案に計上されている。 ▶︎
▶︎これだけではない。日本政府によるTSMC誘致は、昨年11月に東京大学半導体設計研究センター「d.lab」と同社が共同研究に向けた協定を締結しているのだ。
まさに「重要な先端技術の研究開発について資金支援と、政府が開発に有用な情報を提供可能とする枠組み(=研究機関)を新設」した象徴と言っていい。これまで半導体チップの微細化競争でTSMCは世界をリードしてきたが、強い危機感を抱き、ここに来て次世代半導体を巡る技術革新で半導体ビジネスに大きなゲームチェンジャーが起きている。
こうした中で、26日には首相官邸で経済安全保障推進法案に関する有識者会議(座長・青木節子慶大大学院教授)が開催された。同会議には、北村滋前国家安全保障局長、兼原信克元内閣官房副長官補、原一郎経団連常務理事、渡部俊也東大未来ビジョン研究センター教授、角南篤笹川平和財団理事長など18人が名を連ねている。産・官・学協同の「オールジャパン」で臨むのである。