日米首脳テレビ会談は1月21日午後10時2分(米国東部標準時間同午前8時2分)から1時間20分間,行われた。当初の予定ではジョー・バイデン大統領が,午前9時半から内政ブリーフィング,同11時のスピーチなど日程が目白押しで岸田文雄首相との会談は1時間に限られた。然るに日本側はトップ会談の実質時間を少しでも多くするべく同時通訳を用意した。ところが,バイデンが提起した議題が16項目と多岐に及び,予定オーバーの約80分間となったのである。
では,岸田・バイデン会談の肝は一体何だったのか。新聞報道(22日付朝刊各紙の1面トップ)の見出しから判断すれば,『読売新聞』の「日米豪印会談日本開催―今年前半、バイデン氏来日へ」を除くと,他紙は「日米,経済2プラス2新設―首脳合意,ウクライナ侵攻,抑止へ結束」(『日経』),「日米,経済版2プラス2新設―首脳会談,バイデン氏訪日へ」(『朝日』),「日米,経済安保2プラス2―首脳テレビ会談,対中朝露連携を強化」(『産経』)とほぼ一致していた。確かに,今春頃にクアッド(日米豪印)首脳会談の日本開催,バイデン来日は大きなニュースである。
他方,これまでの日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)に加えて外務・経済担当閣僚協議(経済版2プラス2)を新設することで合意したこともまた大きく取り上げるテーマであることに異論はない。▶︎
▶︎だが,今回の首脳会談における隠れたメインテーマは,実は米側にとってロシアによるウクライナ再侵攻の可能性が飛躍的に高まっている現在,仮に米国が対露経済制裁に踏み切る場合に日本が確実に共同歩調を取るということだった。事実,首脳協議後に米国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官のカート・キャンベルがホワイトハウス記者団向けバックグラウンド・ブリーフィングで英紙フィナンシャル・タイムズ記者の質問「日本は対露経済制裁に同調するのか」に「(岸田首相は)行動を共にすると述べた」と回答したのだ。
しかし,岸田は報道各社のインタビューで「ロシアのウクライナ侵攻を抑止するために緊密に取り組み,いかなる攻撃にも強い行動を取る」と答えただけで経済制裁に触れなかった。バイデン政権は既にウクライナ在住の外交官の一部家族退避を24日から開始するなど緊迫状態がさらに深まっている。因みに各紙報道の中で『日経』のみが,首脳会談の「主な内容」の1番目に「ウクライナ情勢」を挙げている。それでも,首脳協議のテーマのなかでは台湾海峡の平和的解決を含む中国に関する諸問題に割いた時間が最も長かったことは留意すべきだろう…(以下は本誌掲載)申込はこちら