2月12日付「アベノミクス批判」の岸田総理に宣戦布告…とうとう安倍晋三元首相の「反撃」が始まった…!

2月8日夕、東京・永田町の自民党本部9階の901号室。高市早苗政務調査会長主導で設立された財政政策検討本部(本部長・西田昌司政調会長代理)の会合が開かれた。党内きってのMMT(現代貨幣理論)論者で知られる西田本部長の挨拶で始まった同会合に2人の講師が招かれた。
一人は旧通産省OBの小林慶一郎慶應義塾大学経済学部教授であり、もう一人は安倍晋三元首相のブレーンとして知られた旧大蔵省OBの本田悦朗明治学院大学法学部客員教授(元駐スイス大使・元内閣官房参与)である。先ず確認しておくべきは、この財政政策検討本部は自民党内の積極財政派の橋頭保であることだ。昨年12月1日に1回目の役員会が開かれた同本部は、党内の財政慎重派の財政健全化推進本部(本部長・額賀福志郎元財務相)と財政出動を巡り対立関係にある。積極派であり「検討本部」の最高顧問でもある安倍氏、声高に巨額の財政出動を求める高市氏と、慎重派であり「推進本部」の最高顧問でもある麻生太郎副総裁(前副総理・財務相)、財政規律の必要を唱える茂木敏充幹事長との対立構図は政局絡みになっている。
というのは、後者の「推進本部」が昨年12月7日に党本部で初めて開催した役員会で岸田文雄首相が冒頭挨拶を行っているからだ。即ち、路線対立は「安倍・高市vs麻生・茂木+岸田」ということになる。年が明けて岸田氏は旗幟を鮮明にする。通常国会召集冒頭の首相施政方針演説の翌1月18日、世界経済フォーラム(通称「ダボス会議」)にオンライン形式で出席、特別講演を行った。その中で「持続可能で包摂的な日本経済に変革していくためには、これまでの取組だけでは不十分です」と、事実上のアベノミクス批判をしてみせた。さらに同25日、衆院予算委員会では「株主資本主義からの転換は重要な考え方の一つです」と答弁した。岸田氏が提唱する「新しい資本主義」について国民民主党の前原誠司代表代行の質問に答えたのだが、株主利益の最大化を重視する経済政策に疑問を呈したと、市場関係者に受け止められた。▶︎

▶︎こうした中で、安倍氏自身及びその周辺の動きも際立ち始めた。安倍氏は同16日夕、東京・大手町の経団連会館で国際経済外交総合戦略センター(代表理事・榊原定征元経団連会長)主催の非公開セミナーで政府と日銀の連携、財政と金融の一体の重要さをブチ上げた。出席者によると、まるで財政慎重派に対する宣戦布告のようだったという。
続いて1月中旬から『日経ビジネス』でスタートした不定期掲載コラム「安倍晋三の眼」の最新稿(2月8日号)の中で「大胆な金融政策、機動的な財政支出、そして規制緩和などを通じた成長戦略で経済を成長させていく」と断じている。さて、件の「検討本部」会合で本田氏が出席者に配布した「アベノミクスの現代的意義」と題した資料(A4版36枚)には、次のように記述されている。箇条的にピックアップすると、①ゼロ金利下での財政出動(減税)は効果大、②財政赤字を上回る民間資金余剰(貯蓄超過)、③企業投資と財政赤字が経済を拡大する原動力、④成長の牽引力:成長率(拡大)-金利(抑制)、⑤成長率>金利は歴史的に見られてきた―など挙げて、ポスト・コロナのマクロ政策(財政金融統合政策)が極めて重要であると結論づけている(注意:「成長戦略については制度改革に時間がかかるので、早急に着手するが、本格的な効果が出るのにはデフレギャップがなくなったとき」という但し書きがある)。まさに安倍、高市両氏の「積極財政路線」への理論的援護となっているのだ。さらに2月9日、自民党の衆参院議員(衆院当選4回以下、参院当選2回以下)が「責任ある積極財政を推進する議員連盟」(共同代表・中村裕之農水副大臣ら3人)を発足させた。これまた「安倍応援団」である。そして当然ながら、同日の会合に安倍氏は講師として招かれている。岸田氏の“安倍離れ”が喧伝される中、高らかに号砲ラッパを吹き鳴らす安倍氏の反転攻勢が始まったと言えよう。 

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