2月17日午後(米国東部時間。以下同じ)、ジョー・バイデン大統領はホワイトハウスで記者団に、続いてアントニー・ブリンケン国務長官も国連安保理事会で「ロシアが数日内に侵攻する可能性が高い」と語った。ウクライナ情勢を巡る緊迫度が増したこの間の米CNNテレビの際立った番組について触れたい。13日(日曜日)の「Inside Politics」(ウィークデーは午後12時~1時間。日曜日のみ午前8時~)と、「State of the Union」(毎日曜午前9時~1時間)である。
前者の番組は、リベラル系米紙ニューヨーク・タイムズ、米誌ニューヨーカー、ニュースサイト・アクシオス、CNN記者が出演、最新のロシア軍動向情報などを披瀝した。さらにアフガンからの全面撤退の教訓からバイデン政権が過剰な警告を発していると各記者の見方は一致した。後者の番組に出演したジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官の「ロシアの軍事行動がいつ起きても不思議ではない」発言は日本でも大々的に報道されたので読者も覚えているはずだ。同番組のアンカーマン、ジェイク・タッパー氏が「16日侵攻」の可能性を引き出すべく誘導するも、さすがにサリバン氏は言質を与えなかった。▶︎
▶︎それでも「侵攻は空爆とミサイル攻撃が先行し、その後に戦車部隊が侵入して領土(ウクライナ)制圧になる」と言わせた。そもそも「16日侵攻」説は、米国家安全保障会議(NSC)がその前週に米上下院有力議員への非公式ブリーフで、15日には侵攻準備が終わり、いつでも決行できると述べたことに起因する。
そしてPBS(米公共放送)も11日に「プーチン露大統領がウクライナ侵攻を決断、軍部に作戦遂行を命じた」と報道した。サリバン氏は直ちに「プーチン大統領が最終決断を行ったとは断定していない」と否定してみせた。だが、政治専門サイト・ポリティコは「バイデン大統領が欧州首脳にウクライナ侵攻は16日になるだろうと伝えた」と追撃したのである。かくして「ロシア16日にウクライナ侵攻決行」説が世界中に流布された。その後、15日の露独首脳会談実現、露国防省の「一部部隊の撤収」発表、さらにバイデン氏の「外交解決へ努力」言明などで緊張緩和への淡い期待感が強まった。しかし、バイデン政権の「やるやる」発言はロシアの侵攻があれば「それ見たことか」と、なければないで「危機感を煽ったのが正解だった」と言い募る腹積もりなのだ。「Xデー」は21日?