2月26日付 プーチンへの「制裁措置」日米の間では事前に“擦り合わせ”があった…!

2月24日午前6時(日本時間24日正午)、ウラジーミル・プーチン大統領の命令一下、ロシア軍はウクライナ各地への全面的な軍事侵攻を開始した。総力戦で臨んだ19万人超のロシア地上軍は戦車部隊を伴いウクライナの東・北・南3方面から国境を越え、首都キエフを始め、ハリコフ、オデッサ、マリウポリなど主要都市制圧に向けて進撃している。
と同時にヘリコプター・爆撃機空爆、短距離・中距離弾道ミサイル、地対空・艦対空ミサイル、巡航ミサイル攻撃、サイバー攻撃を行って制空権を抑えた上で同国内の兵舎・弾薬庫を含む軍事施設、空港、火力発電所など基幹インフラを破壊した。100発以上のミサイルが着弾し、多数の民間人やウクライナ軍兵士(ロシア軍兵士も)に死傷者が出た。ワシントン情報によると、首都キエフの陥落は時間の問題とされる。「ウクライナ領土の占領は特別軍事作戦計画に入っていない」と言明したプーチン大統領だが、明らかに目指すのはウクライナのゼレンスキー政権転覆による「親露政権」樹立である。
こうした中で、バイデン米、ジョンソン英、マクロン仏、ショルツ独政権などは現在、強力な対露経済制裁のメニュー作りに傾注している。そして今、筆者の手元には外務省(森健良外務事務次官)が作成した「秘」印付き資料「ウクライナ情勢をめぐる制裁措置」(2月23日付、A4版3枚)がある。その3枚目は「ウクライナ情勢をめぐる対露制裁措置」と題されており、「対露」の文言が加わっている。即ち、<我が国として更なる事態の悪化に応じて、米欧の動きを見た上でとる制裁措置(別途、おはかり)>というキャッチコピーがある上に、「※最大限の対応を必要とする場合を想定。」の注釈が付いているのだ。改めて指摘するまでもなく、本資料は、政府・与党要路向けに特別作成された部外秘扱いである。分かり易いのは、「別途、おはかり」というフレーズだ。
2月24日午前6時(日本時間24日正午)、ウラジーミル・プーチン大統領の命令一下、ロシア軍はウクライナ各地への全面的な軍事侵攻を開始した。総力戦で臨んだ19万人超のロシア地上軍は戦車部隊を伴いウクライナの東・北・南3方面から国境を越え、首都キエフを始め、ハリコフ、オデッサ、マリウポリなど主要都市制圧に向けて進撃している。と同時にヘリコプター・爆撃機空爆、短距離・中距離弾道ミサイル、地対空・艦対空ミサイル、巡航ミサイル攻撃、サイバー攻撃を行って制空権を抑えた上で同国内の兵舎・弾薬庫を含む軍事施設、空港、火力発電所など基幹インフラを破壊した。100発以上のミサイルが着弾し、多数の民間人やウクライナ軍兵士(ロシア軍兵士も)に死傷者が出た。ワシントン情報によると、首都キエフの陥落は時間の問題とされる。「ウクライナ領土の占領は特別軍事作戦計画に入っていない」と言明したプーチン大統領だが、明らかに目指すのはウクライナのゼレンスキー政権転覆による「親露政権」樹立である。▶︎

▶︎こうした中で、バイデン米、ジョンソン英、マクロン仏、ショルツ独政権などは現在、強力な対露経済制裁のメニュー作りに傾注している。
そして今、筆者の手元には外務省(森健良外務事務次官)が作成した「秘」印付き資料「ウクライナ情勢をめぐる制裁措置」(2月23日付、A4版3枚)がある。その3枚目は「ウクライナ情勢をめぐる対露制裁措置」と題されており、「対露」の文言が加わっている。即ち、<我が国として更なる事態の悪化に応じて、米欧の動きを見た上でとる制裁措置(別途、おはかり)>というキャッチコピーがある上に、「※最大限の対応を必要とする場合を想定。」の注釈が付いているのだ。改めて指摘するまでもなく、本資料は、政府・与党要路向けに特別作成された部外秘扱いである。分かり易いのは、「別途、おはかり」というフレーズだ。ロシア軍が戦端を開いた24日のウクライナ全面侵攻がさらにエスカレートした場合には、米欧諸国と準備してきた対露制裁措置をワンランク上げるので、その際に「お諮り」致します、と断っているのだ。
一言でいえば、役人用語。それはともかく、肝心なのはその中身である。米国が当初提示した制裁措置は①ロシアの2銀行を対象とした資産凍結、ソブリン債(各国政府・国際機関が発行・保証する債券)の発行・流通禁止、5個人(ボルトニコフ露連邦保安庁長官、キリエンコ大統領府第一副長官、フラトコフ・プロムスビャズバンク頭取など)の資産凍結、②「ドネツク人民共和国」及び「ルハンスク人民共和国」への新規投資の禁止、両「共和国」からの輸出入の禁止―などだった。ところが、内々に準備したワンランク厳しい「対露」制裁措置として挙げられているのは、①ロシア関係者の査証発給停止・資産凍結、②新たに大手銀行2行(ズベルバンクとVTBバンク)を対象とした取引停止、③証券発行・募集等が禁止の対象となる特定銀行等の追加(及び償還期限を90日未満のものに拡大)、④国際合意リスト汎用品のロシア向けの輸出の不許可、⑤ロシアの47軍事関連団体に対する輸出の不許可、⑥ロシアの軍事能力強化に資すると考えられる汎用品・技術(集積回路・半導体、コンピュータ等)のロシア向け輸出の不許可―が列記されている。これは、いったい何を意味するのか。バイデン米政権は早くからプーチン氏がウクライナ軍事侵攻を決断すると判断し、段階的な対露制裁措置を想定してその実施に関する日米両国で事前の調整を行っていたということである。即ち、北方領土返還と日露平和条約締結実現という対露外交の悲願を負う日本が米国の対露制裁措置に同調しないことを懸念し、ジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官率いる米国家安全保障会議(NSC)と秋葉剛男国家安全保障局長をトップに据える内閣官房国家安全保障局(NSS)の間で擦り合わせが進んでいた証と言っていい。具体的には米側でメニューを作ったNSCのダリープ・シン大統領副補佐官(オバマ政権時の米財務次官補)とNSS経済班長の高村泰夫内閣審議官(財務省から出向)との間の連携が機能しているということだ。ウクライナ危機の中で、図らずも日米連携が上手く行っている一例と言えよう。