3月22日、東京外国為替市場で対ドル円レートが1㌦121円台と6年超ぶりの円安となった。米国の利上げに伴う日米金利差の拡大が円安を誘導していると、外為市場関係者は指摘する。確かに、米国の中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)は同15~16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利を0.25%引き上げて0.25~0.50%とすることを決定した。
そしてパウエルFRB議長は追い打ちをかけるように21日の講演で、金融引き締めを迅速に行うには次回利上げが0.5%の大幅となる可能性に言及したのである。そもそも年初の1月下旬、米ハーバード大学名誉教授のサマーズ元財務長官とニューヨーク市立大学のクルーグマン教授(ノーベル経済学賞受賞)の2人は、22年の「利上げ7回説」を唱えていた。
だが、なぜか日本では両教授の見立てが紹介されることはなかった。逆に2月中旬頃までは、金融政策でハト派的社論の米紙ニューヨーク・タイムズが利上げを急ぎ過ぎると大きな過ちとなると報道したこともあってか、わが国メディアは早期の利上げ実施説に否定的であり、「利上げ5回」説を採っていた。▶︎
▶︎こうした中で、財務省発表の国際収支の月間の経常収支が昨年12~今年1月と2カ月連続で赤字となっている。ここに2月24日のロシアによるウクライナ侵攻の直撃を受け、原油価格急騰など輸入コストの跳ね上がりが経常赤字幅の拡大を招いている。
要するに、過度の円安と輸入コストの増大がダブルパンチとなって「経常赤字・円安同時進行」の泥沼化が起こりつつあるということだ。対外債権額の目減りを意味する経常赤字の拡大は、財政赤字が拡大してもわが国は債権国である以上、懸念の必要はないとする積極財政派にとって“痛手”となるとの見方もできる。
では、財政政策を司る政府と金融政策を担う日本銀行との関係は今後、岸田文雄政権の目玉政策である「新しい資本主義」にどのような影響を与えるのか。安倍晋三元首相など積極財政派に対して、岸田首相ら政権幹部には財政規律派が多いとされる。先日、その一人から長時間、話を聞く機会があった。曰く、私は元来、財政規律派であるが、現下のウクライナ情勢とその後を見通すと財政出動を躊躇すべきでないと思う。夏の参院選後の巨額な経済対策に踏み切る。そして政府と日銀一体の総力戦で臨む――。確かに、気迫はこもっていた。