はなからマイクロ選挙の話題で恐縮だが、看過すべきでない結果となったので、暫くお付き合い願いたい。 参議院議員選挙(6月22日公示・7月10日投開票)を3カ月後に控えた4月10日に実施された京都府議補欠選挙(京都市北区、改選数1)のことである。 同補選に立候補したのは自民、立憲民主、日本維新の会、共産党の公認候補4人である。自民新人の津田裕也、立民元職の松井陽子、維新新人の畑本義允、共産新人の福田陽介の各氏だ。立民の泉健太代表のお膝元(衆議院京都3区)であることから永田町関係者の一部で注目を集めた。畑本候補が予想外の1万1161票(得票率31.88%)を獲得、辛勝ながら当選した。最下位はただ一人の女性候補の松井氏で6305票(18.01%)。東京・永田町の党本部に衝撃が走った。同氏の得票数は2021年10月衆議院議員選挙の立民衆院比例票とほぼ同じだった。
この京都府議補選の結果をどうみるべきか。耳目を集めるのは、立民の福山哲郎前幹事長である。参院京都選挙区(改選数2)選出の同氏が2016年参院選(京都市北区)で獲得したのは1万6516票。単純に比較できないが、立民票は激減したのだ。今年の参院選では案の定、維新が大阪ガスでESG推進室長を務めた楠井祐子氏擁立を発表し、福山氏は厳しい選挙戦を余儀なくされる。京都選挙区の現状を指摘するまでもなく、立憲民主党が参院選の選挙区(1人区と複数区)、比例代表ともに厳しい選挙戦を強いられるの確かだ。ここで参院選の概要を見ておく。参院245議席のうち改選は比例代表48、選挙区73の計121議席。改選議員の内訳は自民57(比例20、選挙区37)、公明14(比例7、選挙区7)、立民23(比例8、選挙区15)、国民10(比例4、選挙区6)、維新6(比例3、選挙区3)、共産6(比例5、選挙区1)など。注目すべきは東京選挙区(改選数6)だ。自民が現職の朝日健太郎、新人の生稲晃子(元「おニャン子クラブ」メンバー)の両氏、公明は現職の竹谷とし子氏、立民は現職の齊藤蓮舫、新人の松尾明弘(元衆院議員)の両氏、共産は現職の山添拓氏、都民ファーストの会は代表で新人の荒木千陽氏、そして維新からは大阪市議の海老沢由紀氏が立候補する。現時点での見立てはどうか。当選確実なのは蓮舫、竹谷両氏で、有力なのが小池百合子東京都知事という後ろ盾のある荒木氏と、40~50歳代に抜群の知名度の生稲氏である。当落線上にいるのが現職の朝日、山添両氏。関西地盤の地域政党から「改革」を旗印に全国政党に脱皮し、非改選9議席と合わせて予算を伴う法案提出権の21議席をめざす維新の海老沢氏に関心が集まるが、同氏は都議会選挙に2回立候補し落選したことがマイナス材料となるのか。▶︎
▶︎いずれにしても、残る2議席をめぐり、現職の山添、朝日両氏を元プロスノーボーダーの海老沢氏が追走する構図になりそうだ。早計にすぎるかもしれないが、参院選の展望はこうである。自民党は比例の現有議席20±1と堅調だ。焦点は32の1人区であり、敗色濃厚な青森、岩手、三重、そして微妙な新潟で敗北したとしても23勝9敗である。複数区では北海道、千葉や神奈川で2人当選の可能性があり、トータルで現有議席57超えが視野に入る。こうした中、岸田文雄首相(党総裁)は、長引くコロナ禍のなかウクライナ戦争の長期化もあり、公認候補および各陣営に緩みが見られると危惧しているというのだ。事実、世耕弘成参院自民党幹事長は筆者に、次のように語った。「繰り返し各候補に檄を飛ばしているが、どうも感度が悪い。気持ちが緩んでの揺り戻しが怖い。選挙区現職は殆ど取りこぼしはないと見ているが、比例が心配だ。(岸田)総理が各経済団体・組織トップとの会合を重ねるのは心配の裏返しです」次は大型連休中の首相外遊。3月の主要7カ国(G7)首脳会合は0泊3日の強行軍で出席したが、今回もハードな日程だ。11月中旬に開催される20カ国・地域(G20)首脳会合の議長国・インドネシア、ベトナム、タイを訪問後、そのままイタリアと英国を訪問する。「外交の岸田」の気概を見せる。岸田氏は明らかに、「プーチンの戦争」勃発を受けて外交・安保政策で米欧との一体化に舵を切った。
具体的にいえば、①今年1月の施政方針演説で言及した「アジア・ゼロエミッション共同体」構想、②今通常国会会期中(会期末6月25日)に成立させる経済安全保障推進法案、③「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」の戦略3文書を今秋までに改定する――というものだ。「台湾有事」を念頭に筆者が注目する③との関係でいえば、中国がすでに周辺地域への他国の軍事力の接近・展開を阻止し、当該地域での軍事活動を阻害する軍事能力(A2/AD、接近阻止・領域拒否)を確立した。そしてA2/AD戦略による対艦弾道ミサイル、長射程対地巡航ミサイルを強化、極超音速滑空兵器(HGV)も配備・開発しているのだ。こうしたことから日米両国は現在、その対抗策をひそかに検討し始めている。
万が一、米中軍事衝突が生じた場合、米軍は第1列島線(沖縄を起点に台湾、フィリピン、南沙諸島、ボルネオまで)の西側に接近できないことから、米国は中国本土に到達する長距離巡航ミサイル(JSM)の日本配備を求めている。その先には射程2775㎞の長距離極超音速兵器(LRHW)の開発・配備がある(東京―北京の直線距離は2100㎞)。この配備が、実は「防衛計画の大綱」に落とし込まれるというのだ。参院選後の今秋、「日本の防衛力強化」への賛成64%という世論(読売新聞調査)をバックに岸田氏は一歩踏み込んだ日米防衛体制の構築を目指すはずだ。