5月14日付 米英豪による安全保障の新枠組み「オーカス」…日本への“お誘い”が「実は本気じゃない」理由

 5月24日、東京で日・米・豪・印による協力の枠組み「Quad(クアッド)」首脳会合が開催される。ホストの岸田文雄首相、米国のジョー・バイデン大統領、オーストラリアのスコット・モリソン首相、インドのナレンドラ・モディ首相が一堂に会す。米・豪・印3カ国は英語圏である(インドの公用語はヒンディー語だが、多言語国家の同国はかつて英国の植民地だったこともあり、今や英語が共有語となりつつある)。
 Quad首脳会合を控えた今、米・英・豪による安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」から日本へ参加の“お誘い”がある。昨年9月に創設されたAUKUSはオーストラリア(Australia)、英国(UK)、米国(USA)の国名の一部を採った造語だ。南シナ海や東シナ海で海上覇権行動を繰り返す中国艦船の脅威のため米英両国がオーストラリアの原子力潜水艦導入に技術協力、あるいは人口知能(AI)や量子技術など先端軍事技術における米英豪の連携、中露による極超音速ミサイル開発・配備への防御網の構築で合意などがオーカス発足時に掲げられた。
 一方、機密情報を共有する英語圏の枠組み「Five Eyes(ファイブ・アイズ)」(米・英・カナダ・豪・ニュージーランドの5カ国)がある。米英が主導して創設したこの枠組みは参加国の情報機関が通信傍受施設を相互活用している。米議会下院軍事委員会情報・特殊作戦小委員会は昨年11月に成立した2021年度国防授権法に向けて日本などとの情報共有拡大への提言を作成していた。事実、ロシア空軍戦闘機ミグ31Kが極超音速ミサイル「キンジャル」を初めてウクライナに空中発射・爆撃したのは3月18日だった。そして4月5日、米国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官のカート・キャンベル氏はワシントンでの講演で、オーカスに関し「参加を希望する主要国と技術・軍事的に関わる機会があると思う」と述べ、日本参加を念頭に協力拡大の意向を明らかにしている。
 改めて指摘するまでもなく、2014年のロシアのクリミア半島併合の際にサイバー攻撃によってウクライナの防空システムを無力化の上で軍事侵攻したことを念頭に置き、中国が台湾に対しサイバーや電磁波などによる「ハイブリッド戦」を準備していると、キャンベル氏が警告したのである。▶︎ 

▶︎このように「オーカス」、「ファイブ・アイズ」など米英が中心の軍事技術開発や情報共有における英語圏諸国との連携の動きがロシアのウクライナ侵略を機に加速化している。
 今後、日本では米英主導の対中露包囲網形成についての議論が来たる参院選後に浮上すると思われるが、それは具体的にクアッド(日・米・豪・印)中心か、オーカス(米・英・豪)に日本、場合によってはカナダを加えた「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」結成がテーマとなることを示唆するものだ。11日に参院本会議で可決、成立した「経済安全保障推進法」には日本が今後、そうした主要国との緊密な連携を推進する法的根拠が担保されているのだろうか。同法には「技術の保全」「技術の育成」「体制の強化」など幾つかの肝となるポイントがある。その中でも技術の保全に関する「セキュリティクリアランス制度の整備」がそれだ。4月14日午前、東京・永田町の自民党本部で党安全保障調査会(会長・小野寺五典元防衛相)の勉強会が開かれた。講師として招かれた手塚悟慶大環境情報学部教授のレクチャーが俊逸だったという(非公開なので筆者は又聞き)。同教授は「台湾有事が起きた際、日米同盟があっても、国家サイバーインテリジェンスシステムがないため、国家安全保障に関わる日米での迅速な情報共有が不可能である」と断じた上で、国際サイバーインテリジェンスサークル(ICIC)のギブ&テイクの枠組みが必須であり、ファイブ・アイズとの国際連携の構築を図るべきだと説明した。
 と同時に、①官邸にサイバーセキュリティ司令官を設置、同司令官のための法的権限を確立すること、②政府の組織内ネットワーク(Intel Intra-Net)を、量子技術を用いた高度な暗号化で構築すること、③政府職員が外国人エージェントと癒着している可能性を精査するクリアランス制度を確立すること、など具体策の提言も行なっている。ここで登場する「ヒトの区分・セキュリティクリアランス」は米連邦政府職員に与えるPIVカードを指す。これを基にして「人を守る」「データを守る」「システムを守る」というのである。
 だがしかし、残念ながら経済安全保障推進法にはこのような法律的・制度的な制定が盛り込まれていない。故に、相手がファイブ・アイズであれ、オーカスであれ日本に参加を声掛けしたとしても本気ではないのだ。日本は情報共有のカウンターパートとして信用されていないということである。日本人の「安保認識」は未熟と見られているのだ。