第26回参院選(6月22日公示・7月10日投開票)まで2カ月を切った。ここに来て際立つのが、自民党(総裁・岸田文雄首相)と日本維新の会(代表・松井一郎大阪市長)の「対決」である。自民党の茂木敏充幹事長は5月8日、大阪市内で行った街頭演説で、大阪維新の会創設者の橋下徹氏を念頭に「創設者がロシア寄りの発言を繰り返している。維新国会議員は何も言えない。この状態では身内に甘い政党だ」と述べた。
これに対し、松井氏は9日、記者団に「橋下さんは民間人だ。自民党の幹事長としては薄っぺらい」と強く反発した。茂木、松井両氏の鞘当てはその後も続いている。そもそも大阪は維新の本拠地であり、昨年10月の衆院選で自民は19の小選挙区で1議席も獲得できなかった。一方の維新は13議席獲得の圧勝。 次期参院選の山形選挙区(改選数1)に自民は候補者を擁立せず、事実上、国民民主党現職の舟山康江氏を“側面支援”しているとされる。その背景には、野党の国民が今国会で2022年度政府予算案に賛成したこと、さらに同党の岸田政権接近を受けて自民党の麻生太郎副総裁や茂木幹事長、小渕優子組織運動本部長が最大の労働組合・連合の芳野友子会長の“籠絡”に傾注していることなどがある。▶︎
▶︎平たく言えば、自民が国民を介して労組票の取り込みを企図しているのである。そうした中で、維新は遠藤利明自民党選対委員長の地元である山形選挙区に候補者擁立を決めた。維新は敢えて、自民党執行部が党内からの批判を承知のうえで決定した「山形不戦敗=国民現職当選」という目眩ましに、ガチンコ相撲を挑んだ。 事ある毎に、松井氏は平場の記者会見でも菅義偉前首相との信頼関係を隠さない。物価対策として22年度補正予算案編成の必要でも松井、菅両氏は一致、当初は22年度予算に盛り込まれた予備費の充当を主張していた岸田政権を押し切った。
では、憲法改正問題などで共同戦線を歩む維新に対し好感を抱く安倍晋三元首相はどのような立ち位置にいるのか。最近の安倍氏の露出度の高さは驚くばかりだ。同氏は9日、大分選挙区に出馬する自民新人の古庄玄知氏の後援会で講演し、「日銀は政府の子会社だ」と発言、物議を醸した。同選挙区には国民現職の足立信也参院幹事長がいる。今後、岸田・麻生・茂木vs安倍・菅・松井の対立構図が表面化しそうだ。