第26回参院選は残り1週間で投開票の7月10日である。メディア各社の参院選中盤情勢調査も出そろった。産経新聞・FNN(フジニュースネットワーク)の合同調査(6月25~26日実施)によると、自民、公明の与党に日本維新の会と国民民主党などを加えた「改憲勢力」は、憲法改正の発議に必要な3分の2(166議席)に届く公算が強いとする。
一方、①参院選勝敗のカギを握る32の改選1人区で自民党が約8割の25で優位に立っている、②全国13の改選数2以上の複数区でも候補者を2人擁立している4選挙区は北海道を除く千葉、神奈川、東京で2議席を固めた、③比例代表でも前回2019年の19議席を上回る可能性がある、など自民が単独過半数70議席をうかがう勢いであるというのだ。奇しくも筆者が編集・発行するニュースレター『インサイドライン』(6月25日号)で、「参院選の焦点は『70』と『82』」と題した記事を掲載、今選挙の焦点となる数字(与党の勝敗ライン)は自民、公明両党の非改選議席69に加え改選議席125のうち計56議席を獲得すれば過半数をクリアできる「56」ではなく、自公改選議席のうち計63議席獲得できれば過半数に届く「63」でもなく、自民が非改選の55議席合わせて単独過半数の125議席に達する「70」であり、憲法改正に前向きな勢力で参院総定数248議席3分の2(166議席)が改憲発議に必要なため非改選84に改選82を加算すればクリアできる「82」であると書いた。
ところが、NHKのトレンド電話調査(6月24~26日実施)では岸田文雄内閣の支持率が4週前調査(同10~12日実施)、3週前調査(同17~19日実施)と比べると、ジワジワと下がっているのだ。58.8%→54.7%→50.2%。物価高対策が十分ではないと、国民の岸田政権批判が強まっている証しである。日本経済新聞の名物コラム「大機小機」(6月30日付朝刊)に、今参院選は緊張感が驚くほど感じられないとした上で、次のように書いている。《今回の選挙でも各党のトップ公約は物価対策だ。有権者の関心もそこにある。物価高はモロに肌を刺激する》。果たして、冒頭の産経・FNN合同調査による選挙予測「複数区の(自民)全員当選視野」通りの結果となるのか。▶︎
▶︎筆者は手元にあるマスコミ各社や自民党独自情勢調査、民間調査会社の調査などを参考に、取材を加えて予測を試みた。
概ね以下のようなものだ。32の1人区は自民党の25勝7敗ではないか。敗北が確定的は青森、岩手、山形、長野、沖縄であり、大接戦の山梨、新潟、大分のうち新潟の立憲民主現職を自民候補(公明推薦)が鼻の差で逃げ切る可能性があること、そして大分も自民候補(同)が国民現職をキャッチアップする勢いであることから自民7敗とした。複数区では自民、立民共に2人擁立の北海道(3人区)が3人目を巡って熾烈な戦いを演じており、残る1週間で勝敗が決する。自民が勝ち抜けば『産経』の見出し「複数区の全員当選」通りとなる。選挙のプロが注目する静岡(2人区)は自民新人が当確だが、無所属現職が国民現職に競り勝てば自民は追加公認するので自民2人当選となる。
政府の物価高対策批判が有権者に浸透したとしても、既報のように比例代表は前回を1議席上回る20に届くのはほぼ間違いない。ここで1人区、複数区、比例代表をカウントすると、1人区:基数25+1、複数区:基数15+1、比例代表:基数20+1で、計60+3となる。自民単独過半数の70に届かないという、絶妙なバランスが取れた結果となるのではないか。そうだとしても、岸田文雄首相はドイツ南部エルマウでの主要7カ国(G7)首脳会合が閉会した6月28日(現地時間)、ミュンヘンで行った記者会見で2023年5月19~21日にG7広島サミットを実施すると発表した。
G7サミットは毎年6月下旬開催が恒例となっていたが、この1カ月前倒しは何を意味するのか。第209回通常国会は来年1月に召集される。そして23年度政府予算案は6月半ばまでに成立する。となると、岸田首相は地元・広島で「核なき世界」をアピールするG7サミットを議長として取り仕切り、その成功と大型予算を引っ提げて来年夏前の衆院解散・総選挙断行を胸中に収め、全力投球で参院選に臨んでいるはずだ。