7月23日付 止まらない日本の「国力低下」…今こそ日本経済に最大限のヒトとカネを投入するときだ

 5月11日に成立した経済安全保障推進法に基づいて、8月上旬にも 内閣府に経済安全保障推進室(室長・泉恒有内閣審議官=財務省出身)が設置される。そして9月下旬には「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本方針」(以下、基本方針)と「特定重要物資の安定的な供給の確保に関する基本指針」(以下、基本指針)が閣議決定される。音読すると耳障りだと言われそうだが、当該の省庁が使う用語なのでお許し願いたい。基本指針第3章「特定重要物資の指定に関する事項」の第3節「外部依存性」が、現下の日本にとってまさに喫緊の課題である。その前振りに《外部に過度に依存する物資とは、供給が特定少数国・地域に偏っており、当該特定少数国・地域からの供給途絶等が発生した場合に甚大な影響が生じ得るものをいう》と記された上で、その「程度」について、次のように規定する。《▼国内需要量に占める特定少数国・地域への依存度の程度▼国内需要量に占める国内生産の程度▼国内需要量又は国内輸入量に占める最大輸入先国・地域からの輸入量の程度》―である。 
 この「程度」以外にも「代替供給確保」と「供給途絶等への許容度」についての言及があるが、ここでは「程度」に絞って論考を進めたい。もちろん、それには理由がある。契機は「日経新聞」記事2本だが、前者は7月19日付朝刊の「原発燃料 脱ロシア難航―米、ウラン調達2割依存、日本に供給協力要請」であり、後者は同日付夕刊の「ガス欧州供給『保証できず』―ロシア国営『不可抗力』」である。前者記事は同紙の気候変動エディターによるもの。原子力発電は低濃縮ウランを燃料に使うが、ロシア国営原子力企業ロスアトムは濃縮サービスの世界市場で36%のシェアを占めており、脱ロシアを進める米国は日本産濃縮ウランを含むウラン製品に期待しているというのだ。原発再稼働が遅れる日本には在庫が潤沢というのだ。正直、初めて知った。
 一方の記事もまたロシア絡みである。ロイター通信(18日付)を基に報じたものであるが、ロシア国営天然ガス会社ガスプロムが独エネルギー大手ユニパーなど供給契約を結ぶ欧州企業に対し、「不可抗力」により供給を保証できないと通告したというのだ。その理由として挙げたのは、パイプライン「ノルドストリーム」(ロシア北西部からドイツに至る)用タービンをカナダで修理中だが返却が遅れているためだとして、先月中旬から供給量を通常の約4割に削減、7月11日には供給を10日間停止した。そして21日に4割供給に戻した。明らかに欧米による対露経済・金融制裁への報復である。▶︎

▶︎こうした状況を知ると、先に紹介した「基本指針」にある外部に過度に依存した「程度」(=主語)の前に必ず「国内需要量(国内輸入量)に占める」が付いているが、それだけではなく同盟国・米国を念頭に「友好国が特定少数国・地域からの供給途絶に直面した場合の代替供給の可能性」についても記述することが求められるのではないか。事ほど左様に、現在は《重要な物資の安定供給確保を図る上で、調達及び供給の現状やサプライチェーンの抱える課題を把握することは重要であり、不断の情報収集・検証に努める必要》に迫られているということなのだ。
 この「基本方針」と「基本指針」は、東京・永田町の自民党本部で7月19日午後に開かれた経済安全保障対策本部で配布されたものだ。今春以降、同対策本部座長の甘利明前幹事長が中心となってオール霞が関の協力を得て協議・体系化したものである。この「特定重要物資」の指定に関する4つの要件が肝である。①国民の生存に必要不可欠②供給が特定少数国に偏り外部に過度に依存している③輸出停止などにより供給途絶の蓋然性がある④供給途絶の実績があるなど特に必要と認められる―。 
 そして「特定重要技術」としては、人工知能(AI)、バイオ技術、マイクロプロセッサ・半導体技術、量子情報科学、先端エネルギー・畜エネルギー技術、サイバーセキュリティ技術、宇宙関連技術、先端材料科学など20分野がリストアップされたが、今秋以降、有識者を含めた会議で調査研究対象を絞り込む。いずれにしても長く続いた低成長による「国力」ダウンが著しい日本の現状を直視すれば、経済安保政策の重要性は火を見るより明らかだ。岸田文雄政権は法制化に続く組織づくりを終えたら直ちに、最大限のヒトとカネを投入して日本経済を成長軌道に戻すべく総動員体制に踏み切るべきである。日本を政治・経済・外交・安保・技術・学力・文化・人口の「三等国」にしてはならない――という点で各界のコンセンサスを得られるはずだ。