9月17日付 ホワイトハウスを仕切る大統領首席補佐官…後任は「ライス元大統領補佐官」が最有力

 米ワシントンDCから筆者の元に届いた最新情報によると、ホワイトハウスを仕切るロン・クレイン大統領首席補佐官が11月8日の米中間選挙後に退任するという。バイデン米政権は二重構造で成り立っている。
核であるジョー・バイデン大統領(79歳)を覆う第一層は「内政チーム」であり、クレイン大統領首席補佐官(61)、マイク・ドニロン大統領上級顧問(63)、スティーブ・リチェッティ大統領顧問(64)、アニータ・ダン大統領上級顧問(64)である。4人に共通するのは、オバマ政権時のバイデン副大統領時代の首席補佐官、顧問、そして2020年の大統領選時の選挙対策本部長、広報戦略本部長等を務めた最側近であるということだ。例えば、40年に及ぶ知己のドニロン氏は、9月8~9日にロサンゼルスで開かれた日・米・豪・印・韓など14カ国が参加する「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」閣僚会合を主導したジーナ・レモンド商務長官(前ロードアイランド州知事)と同郷であり、強力な後ろ盾である。兄のトーマス・ドニロン氏はオバマ政権の国家安全保障担当大統領補佐官で、夫人はホワイトハウス(WH)のキャサリン・ラッセル前人事局長(現ユニセフ事務局長)。
さらに言えば、トーマス氏は現在、米最大手投資会社ブラックロックのシンクタンク会長であり、金融界出身のレモンド氏は次期財務長官が有力視される。バイデン政権にはブラックロック出身者が少なくない。次は、ジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官(45)や、アントニー・ブリンケン国務長官(60)に代表される第二層「外交・安保チーム」である。バイデン氏の信頼厚い両氏だが、こんなことがあった。2021年4月に行われた菅(義偉)・バイデン会談に当たり、日本側は国務省を通じて昼食を交えて首脳会談を要請した。▶︎ 

▶︎ところが、内政責任者のクレイン氏が拒否したのだ。重要法案を抱える議会日程から時間の余裕がないとの理由で。頭を抱えた菅官邸は、菅氏が官房長官時代に交流を深めたキャロライン・ケネディ元駐日米大使(現駐豪大使)を通じてリチェッティ氏に頼み、WHでの“ハンバーガー会談”が実現したのだ。
さて、問題は仮にクレイン氏が退任するとなると、その後任は誰なのかである。件の情報によれば、スーザン・ライス国内政策会議(DPC)委員長(57)が最有力というのだ。ライス女史はオバマ政権の国家安全保障担当大統領補佐官である。当時、世上では「反日」「嫌日」と囁かれていた人物だ。我が国の外交・安全保障当局はどれだけ同女史に煮え湯を飲まされたか、当時を知る筆者も十分承知している。その頃を知り且つ岸田文雄政権の要路にいる知己に感想を求めたら、一言だけ「我が国にとって最悪の人事」が返ってきた。さて、WH関連ではもう一つの注目人事がある。日本でも馴染みのあるカート・キャンベル国家安全保障担当大統領副補佐官兼インド太平洋調整官(65)の後任人事だ。同氏は米中間選挙前にも退任する可能性が高い。オバマ政権時に国務次官補(東アジア・太平洋担当)を務めたキャンベル氏からすれば、現在の直属上司であるサリバン氏やブリンケン氏はかつての部下なのだ。どうやら、これ以上やっていられないという想いのようだ。
因みに同氏夫人は米連邦準備制度理事会(FRB)のラエル・ブレイナード副議長。ブレイナード氏もオバマ政権時の財務次官(国際担当)である。ここでもキャンベル氏は夫人に位負けしていたのだ。同氏後任が確実視されるのが、イーライ・ラトナー国防次官補(インド・太平洋担当=45歳)である。同氏もまたバイデン上院外交委員長時代の同委員会スタッフであり、副大統領時代の副補佐官(国家安全保障担当)である。付言すれば、ラトナー氏夫人のジェニファー・ヤン・ラトナー氏は民主党在野時代のキャンベル氏が創設したコンサルタント会社アジア・グループの役員。こうして見てみると分かるように、米国もまたネポティズム(縁故主義)社会なのだ。